【野球】阪神・植田海 藤本コーチの秘蔵っ子が来季1軍定着を狙う
今、タイガースの若手の中で最も“旬”な選手と言っていいだろう。「みやざきフェニックス・リーグ」で奮闘中の2年目、植田海内野手(20)。同リーグでは現在、21打数9安打で打率・429と高アベレージをマーク。「2番・遊撃」として、右肩上がりの成長曲線を描いている。
10月1日の巨人戦(甲子園)では、代走でプロデビュー。盗塁死というほろ苦さを味わったが、50メートル5秒8の快速に聖地のファンは大いに沸き上がった。金本監督もチーム随一の脚力に目を細め、来季に期待する若虎の一人に挙げている。
そんな20歳を、特別な思いで見つめている人がいた。入団当初から、二人三脚で1軍を目指し続けてきた藤本2軍守備走塁コーチだ。14年秋に初入閣した藤本コーチにとって、当時ルーキーの植田は“一番弟子”。2学年上の北條と共に、基礎基本から徹底的にたたき込んだ。また、技術だけではなく、プロとしてのあり方も惜しみなく伝えてきた。
「いつまでも1年生ではないんだから。後輩もどんどん入ってきて、チャンスもなくなっていくのがプロの世界。そんなに甘くないよ。本気で気合を入れてやらないと、選手生活が終わってしまう」。
昨年6月に古傷の腰痛が再発し、長期離脱を余儀なくされた背番号62。春から始めたスイッチヒッターへの挑戦も中断し、体幹を中心としたリハビリメニューをこなすことしかできなかった。実家から見守る母・美奈子さんも、息子への心配が尽きなかったという。
「今ままでは絶対なかったことなんですけど、海(植田)が『ちょっとやばいかも』と弱気になっていたんです」。厳しいプロの世界に1年目から直面しているわが子。それでも、藤本コーチがそばにいてくれる。美奈子さんは、思いがけない告白をしてくれた。
「実は私、昔から藤本コーチの大ファンなんです。こんなことを言ったら、海に怒られそうですけどね(笑)家の近くで(滋賀県甲賀市)野球をやられていたこともあって、どこか不思議な縁も感じているんですよ」。
藤本コーチはプロ入り前、滋賀県甲賀市内の甲賀総合科学専門学校の野球部に所属していた。両者はほんの少しの間だが同じ土地の空気を吸って生活していたことになる。そして月日がたち、縦じまのユニホームが2人を結びつけた。
植田は今季、2軍戦76試合に出場して打率・168、13打点。シーズン終盤にメキメキと頭角を現し、1軍初昇格を果たした。今秋は、メキシコで開催されるU-23ワールドカップにも日本代表として挑戦する。一回りも二回りも大きくなり、来季は一気に1軍定着が目標だ。
“師匠”のアドバイスを道しるべに、背番号62がプロの道を歩んでいく。(デイリースポーツ・中野雄太)