【スポーツ】東京五輪 一本重視の柔道ルール改正で“塩試合”は防げるか

 2020年東京五輪に向けて、柔道がまた新たにアップデートする。国際柔道連盟(IJF)は今月9日、来年以降のルール改正を発表した。現在は3段階で区別する技のポイントのうち3番目の「有効」を廃止し、「技あり」と「一本」に限定。従来の「有効」を実質的に統合した形になる「技あり」は何度重ねても一本にならず、合計2度での「合わせ技一本」は消滅する。

 それ以外にも、男子の試合時間が5分から女子と同じ4分に短縮され、技の優劣を重視し、指導差だけで4分間が終了すれば、時間無制限の延長戦に突入。指導は従来の4度目から3度目で反則負けとなる。

 今回の改正の狙いについて、IJFの理事として議論に参加していた山下泰裕氏は「世界の中で柔道の価値を高めるために、『一本』を重視してダイナミックにしようという話が出た」と説明した。その根底には、柔道をさらに人気スポーツに引き上げたいという狙いがある。

 12年ロンドン五輪での国際オリンピック委員会(IOC)による各競技への評価では、テレビ放送時間や新聞、インターネットへのメディア露出、観客数などを分析した結果、柔道は下から3番目のCランクに位置づけられた。

 山下氏は「柔道は(Bランクの)サッカーやテニスに比べて評価はまだまだ高くない。柔道を知らない人が見ても面白いと感じるような改正が必要」という問題意識を明かした。ルール改正に向けたIJFの議論には、メディア代表も臨席し、「テレビで見ても面白いダイナミックなコンテンツにする必要がある」との認識を示したという。

 ルール変更の契機となったのが、リオ五輪男子100キロ超級決勝だという。序盤に指導を受けた原沢久喜(日本中央競馬会)は、手堅い闘いに徹した王者テディ・リネール(フランス)に指導1-2で惜敗。「あれはがっかりした。真の王者を決めるのに指導差一つでいいのかという話になった」(山下氏)。しょっぱい“塩試合”を防ぐべく、新ルールでは指導差だけでは時間内に決着がつかず、延長戦に突入することになる。

 「柔道をよりダイナミックにして、魅力的なコンテンツにする」。その目的のために、豪快な「一本」の価値を高めるというIJFの意図は十分理解できるものだが、果たして、新ルールが攻撃的な柔道を促進するかは「実際にやってみないとわからない」(山下氏)。

 例えば、指導差だけでは時間内に決着がつかないようになるとはいえ、ゴールデンスコア方式の延長戦では指導差で白黒が決まる。実力が拮抗(きっこう)した者同士の戦いでは、簡単に投げ技が決まらないのも柔道の難しさであり、面白さでもある。消極的ではあったが、組み手で原沢を完封したリネールのうまさも柔道における強さの一つであり、“守る柔道”を完全に排除することは難しいのではないかと個人的には思う。(デイリースポーツ・藤川資野)

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