【芸能】Perfumeの紅白 “最先端だまし絵”の仕組み 虚構と現実を交錯
昨年のNHK紅白歌合戦。またまたPerfumeがやってくれた。「ダイナミックVR」と銘打ったパフォーマンスは、すごいことは分かるのだけれど、一体どうなっていたの?どんな仕組みなのか、関係者を取材した。
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まずは紅白でのパフォーマンスを振り返る。一言で言えば、床と背後に設置したLEDパネルを「1枚絵」のように錯覚させる、トリック・アートの超最新バージョン。レコード会社の担当者によれば、カメラのカット割りに対して「このカメラはここにあって、こういう角度だから、こうプログラミングして…」と計算し尽くし、メンバー3人がデジタル空間に浮遊しているかのような違和感のある映像を作り上げた。
3人のパフォーマンスが高度な再現性を有しているから可能な演出でもあり、一発勝負の“生感”がもたらす驚きと意外性に満ちていた。あえてLEDに会場セットと同じデジタル映像を流すなど、虚構と現実を交錯させ、錯覚をとことんまで追求している。
会場とテレビの前で違う体験をする試みで、リハーサルの際、NHKホールの客席で見ていたときは、どんな演出になっているのか、ピンとこなかった。本番をテレビで見て初めて全貌が分かり、なるほどとうなった。
この演出は、昨年9月に放送された「Mステ ウルトラフェス2016」内でのパフォーマンスを進化、発展させたもの。当時は「オプティカル・イリュージョン」と命名されていた。
紅白でのパフォーマンスには、これに「連動する光線」が加わっている。3人の衣装に取り付けられたポイントをカメラが追跡(トラッキング)。動きを即時データ化し、LEDに反映させることで3人の手足の動きに合わせて流線型の光の筋が舞った。
2014年はドローンと連動、2015年は仮想空間と現実のNHKホールをリアルタイムで融合。近年、Perfumeは紅白で“最新作”を提示してきた。
テクノロジーを担当するのはリオ五輪の引き継ぎセレモニーと同じ「Rhizomatiks(通称ライゾマ)」の真鍋大度氏。ドラマ「逃げ恥」の“恋ダンス”で時の人となったMIKIKO氏が演出、振り付けを担当している。新聞記事では、主語を「俳優の○○」「男性○人組グループ○○」などと肩書付きで表記するが、もはやPerfumeは「女性3人組テクノポップユニット」を超えたスペシャリストたちの集合体だ。
とはいえ、ライゾマを特集した「美術手帳」1月号のインタビューで真鍋氏はこう語っており、Perfumeの核を伝えている。
「僕らがやっていることはパフォーマーの努力によって成り立ってるものばかりなんです。当たり前のようにやっているように僕らも錯覚してしまうこともありますが、実際にはものすごく大変なことをお願いしています。だから、Perfumeがやっていることを他でそのままやるのは無理だと思う」
もはや舞踊や演舞の達人的なすごみすら感じさせる広島出身の3人が、軽やかに見せる流麗にして力強いパフォーマンス。どんな演出であろうと涼しい顔で完璧に演じきる、その姿こそが最大の「錯覚」なのかもしれない。(デイリースポーツ 古宮正崇)