【野球】楽天の独身選手が寮を出たがらない理由は

 新年を迎え、各球団のルーキーたちが続々と入寮している。楽天でも、育成選手を含めた14人の新人たちが、仙台市内の泉犬鷲寮でプロ生活をスタートさせた。

 各球団によって規則は異なるが、どこでも少なからず、入団から一定の年数は寮生活が義務づけられている。楽天の場合は、原則として高卒が4年間、大卒が2年間、社会人出身が1年間。寮での暮らしは集団生活であり、夜は必ず門限もある。かつては、自由を求め、1年でも早く寮から“卒業”することを望む選手が数多かったが、球団関係者は「昔のプロ野球は早く寮を出たいというのが多かったと思いますが、今は逆に、あまり出たがらないんですよ」と話す。

 もちろん義務づけ期間中でも、結婚したり、1軍で活躍したりして一定の成績を残せば、前倒しで退寮を認められる。だが、例えば今年で高卒4年目を迎える松井裕樹などは、本人の希望もあって寮生活を継続している。今や球界を代表するクローザーに成長した松井裕の実績を考えれば、“任期満了”を待たずに独り立ちが認められてもおかしくないが、迷わず寮暮らしを選択したのだという。

 こうした背景について、球団関係者は「まず、最近は栄養面、食事面への意識が高まってきたことが要因では」と分析する。近年、以前にも増して、食事によるパフォーマンス向上や、コンディション維持に対する関心、知識が深まっており、選手自身が栄養管理をより重視する傾向にある。一人暮らしとなると、慣れない自炊をするか、外食に頼るしかない。寮ならば“3度のメシ”は保証され、しかもアスリートとして必要なカロリー、栄養が計算されたメニューを口に運ぶことできる。

 また、敷地内にはウエートルームや室内練習場が完備されており、いつでも体を動かせる環境が整っている。金銭面を考えても、月々に寮費を支払っているとはいえ、家賃や光熱費などを考えれば支出も少なくて済む。「結婚していれば話は別ですが、独身選手にとって、寮を出ることはデメリットしかない、ということになります」(球団関係者)。集団生活から解放されシングルライフを手に入れることよりも、寮暮らしによるメリットが大きいと感じる選手が増えているようだ。

 犬鷲寮の門限は、未成年だと午後10時、成人すると同11時。シーズン中の遠征でも「今の若い選手はあまり外に出なくなった」という声を耳にするようになった昨今、特に不満の声もないのだという。かつて球界では、門限に間に合わず施錠された扉をよじ登って部屋に入り…なんて“伝説”も数多く聞かれたが、今は昔。これも時代の流れなのだろう。

 さて、楽天の期待のドラフト1位・藤平尚真(横浜)は新たな住環境に「施設も素晴らしく、野球に集中できる」と満足の様子だ。限りない可能性を秘める18歳の成長を、恵まれた環境が、さらに後押しするはずだ。(デイリースポーツ・福岡香奈)

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