【スポーツ】女子レスリング東京五輪“センター”候補は17歳
リオデジャネイロ五輪で6階級中5階級でメダルを獲得し、そのうち4つが金メダルと、圧倒的な成績を収めた女子レスリング日本代表。2020年東京五輪では全階級制覇も視野に入れているが、国内の代表争いは早くもし烈を極めている。さらに世代交代も必至で、五輪4連覇の伊調馨(ALSOK)、“霊長類最強女子”吉田沙保里(至学館大職)に代わるスターが待望される。
その台風の目になりそうなのが、48キロ級で昨年12月の全日本選手権を初制覇した17歳のホープ・須崎優衣(すさき・ゆい)=エリートアカデミー=だ。全日本では全試合無失点で圧勝し、2016年は国際大会も含めて負け知らず。3年後のエース候補との呼び声も高い高校2年生は「東京五輪のマットには絶対に私が立って、金メダルを獲りたい」と力を込めた。
早大レスリング部出身の父・康弘さんの影響で、7歳から競技を開始。吉田沙保里(至学館大職)が五輪2連覇を達成した08年北京大会をテレビ観戦し、「自分も吉田選手のように五輪で金メダルを獲りたい」と、本格的にのめりこんだ。
試合直前の待ち時間に、手足をリズミカルに動かすルーティンが印象的な17歳だが「踊るのは好き」とのこと。高校の体育祭では、アイドルグループ欅坂46の「サイレントマジョリティー」を踊り、「自分からではないけど、気がついたらセンターを務めていました」とはにかみながら明かした。強さだけでなく天性のスター性を武器に“東京五輪のセンター”の座を狙う。
1年間無敗の原動力は、15年の全日本選手権での1敗にある。決勝で入江ゆき(自衛隊)にテクニカルフォール負けし、「常に負けたことを思いだして、各大会勝つためにやってきた」と明かした。自身が頂点から一段低いところに立つ表彰台の写真を部屋の天井に張り付けた。「毎朝“くっそー”と思って、起きたときに頑張ろうと思った」。さらに「いつでも悔しさを思い出せるように」と、携帯の待ち受け画面にも設定する徹底ぶりだ。
須崎を指導する元世界女王の吉村祥子コーチ(48)は、まな弟子の勝利への執念の強さに、女子レスリング黎明(れいめい)期からの“源流”を見る。「自分もずっと教わってきた攻めのレスリングができる。気持ちが強いし、それこそが女子レスリングの強さ。練習しすぎてしまうところもあるが、何事もしっかり理解して真面目に取り組むのが彼女の長所」。今後はシニアの世界大会にも本格的に殴り込みを掛けるが、「研究されると思うけど、ナーバスにならずに一歩先のレスリングをすれば大丈夫」と太鼓判を押した。
同階級には、リオ五輪金メダルの登坂絵莉(23)=東新住建=が君臨するが、いつまでも雲の上の存在ではない。まだ対戦経験はないものの、須崎は「尊敬しているけど、東京五輪で優勝するには倒さないといけない選手」と打倒を誓う。その登坂は今月左足の手術を受け、6月の全日本選抜選手権での復帰を目指している。今夏の世界選手権(パリ)の代表権が懸かる舞台で、尊敬する先輩に引導を渡す金星を奪う。(デイリースポーツ・藤川資野)