【野球】21世紀枠の是非 「末代までの恥」発言で物議を醸した野々村氏の意見は…

 「いつまでやるんでしょうね……21世紀枠」

 とある強豪私学の監督のつぶやきである。ハッとした。選抜高校野球大会で21世紀枠が採用されたのは、2001年、第73回大会からである。確かに、当時は21世紀に入ったことを記念し、一時的に採用される特別枠のように感じていた。しかし今では、すっかり定着し、2008年からは2枠から3枠に増枠している。

 個人的には賛成である。普段、実力だけではなかなか勝てない高校の出場は、新鮮味がある。選抜大会をうたっている以上、そうした特色があっていいとさえ思う。

 ただ、21世紀枠とはまったく縁のない甲子園常連校からしてみたら、たまったものではないだろうなという気はする。まず、そのぶん一般枠が減るし、その上、甲子園で対戦し、負けようものなら立つ瀬がない。

 2010年の選抜の1回戦で、21世紀枠で選ばれた和歌山の向陽と対戦し、1-2で敗れた開星(島根)の野々村直通監督の発言は、ある意味、本音だった。

 「末代までの恥。切腹したい」

 野々村の性向をよく知る者なら、いかにも言いそうだなと微笑ましくさえあるのだが、世間からすれば、相当な衝撃があったようだ。猛烈な批判を浴び、野々村はいったん監督を退いた。その野々村に21世紀枠についての是非を尋ねると、意外な答えが返ってきた。

 「21世紀枠をさぞかし恨んでいると思われているんですけど、僕は、03年に隠岐(島根)が出たときは大喜びでしたから。あそこは練習試合ひとつするのも大変。移動に時間もお金もかかる。震災でほとんど練習ができなかったチームとか、本当に出すべき高校に対しては大賛成。ただ、文武両道で出す、というのは、ちょっと待てよという気がするんです」

 21世紀枠には大まかな選考基準があり、一定の成績を残した上で、隠岐のような困難克服校や、文武両道を実践しているチームが選ばれることが多い。後者は、要は進学校だ。野々村が続ける。

 「地方の公立進学校に進む子は、親の経済力も違うし、いわばエリート。なんらマイナスはない。その上、野球でも優遇してやる必要があるんでしょうか。そういう学校は実力で出ないと」

 かつて、こんなことがあったという。東大生も輩出している公立進学校のチームのエースは、秋の大会で敗れた後、受験勉強に備えるために退部した。しかし21世紀枠に選ばれたため、復帰。そして選抜大会のあと、再び退部した。

 「3年間やってこその文武両道ですよ。あとね、21世紀枠の可能性が出てくると、急に町の清掃活動を始めたりするチームもあるんです」

 確かに、方向性がスポーツの本質からずれてしまうと、興ざめしてしまう。

 高校野球専門誌の編集者は言う。

 「17年もやってると、選ぶ高校も一回りも、二回りもしている。対象も限られてきて、もう推薦したいところがないという都道府県もあると聞きます」

 制度の廃止を訴えるつもりはないが、校数や選考基準等、21世紀枠はそろそろ再考の時期にあるのではないか。(ノンフィクションライター・中村計)

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