【野球】センバツ出場の帝京五 元ロッテ投手、小林監督の手腕に注目
第89回選抜高校野球(3月19日開幕、甲子園)の出場校が決まった。代表32校の指揮官の中で、この春注目を集めそうなのが就任1年目で帝京五(愛媛)を48年ぶりの甲子園に導いた、元ロッテ投手の小林昭則監督(49)だ。
同監督は帝京(東京)のエースとして1985年センバツで準優勝。PL学園(大阪)の桑田真澄、清原和博(ともに元巨人など)と同学年で、そのKKコンビを準決勝で倒した伊野商(高知)の渡辺智男(元西武)と決勝で投げ合い、惜しくも敗れた。
筑波大を経て89年ドラフト2位でロッテに入団したが、7年間のプロ生活では1勝もできず、96年に現役を引退した。ロッテで2年間スコアラーを務めたあと、教員免許を取得。母校・帝京のコーチに就任し、9年間に渡って前田三夫監督をサポートした。11年からバスケットボール部とダンス部を指導し、昨年4月、帝京五の野球部監督に就任した。
2軍生活が続いたロッテ時代を振り返り、小林監督は「まさに後悔先に立たず、です」と話す。
「自分はプロに入った時点で満足してしまった。努力はしたつもりだけど、努力はみんなする。その中で人一倍努力した人間が1軍でやれる。引退したあと、もっとやっておけばよかったなあと、つくづく思いましたよ」
小林監督が入団した年、ロッテの1位は小宮山悟氏だった。同監督は引退後のスコアラー時代、小宮山氏がストイックに努力を重ねる姿に衝撃を受けたという。
「我々スコアラーは対戦相手をコンピューターで分析し、情報をまとめたペーパーを選手たちに渡します。ほとんどの選手がチラっと見るだけなんですが、ただ一人、小宮山さんだけは穴が空くほど見てくれた。そして『もっと細かいデータがほしい』って要求してきて、出し直すことも頻繁にありました」
小宮山氏はその後メジャーに渡り、計20年間現役を続けた。
「入ったときはドラフト1位と2位という小さな差だったかもしれないけど、努力した人と努力しなかった人で天と地ほどの差がつきました」
そんな経験があるからこそ、小林監督は選手たちに「人一倍努力しなさい」と言い続ける。「ましてや、あの素晴らしい甲子園に行けるわけですから。自分に甘えることなく、必死で練習に取り組んでほしい」
1969年以来、チーム48年ぶり2度目の甲子園。小林監督は「初戦突破なんて言ってたら絶対に勝てないのが甲子園。目標は全国制覇です」とためらうことなく言い切る。努力することの大切さを説き、選手たちを鍛える指揮官の手腕に注目したい。(デイリースポーツ・浜村博文)