【スポーツ】ハンド男子に超大物監督、東京五輪へカギは脱コピペ&スパルタ
ハンドボール男子で88年ソウル大会を最後に五輪から遠ざかっている日本代表に“超大物”指揮官が就任した。昨夏のリオデジャネイロ五輪ではドイツを銅メダルに導いたダグル・シグルドソン氏(43)。現役時代はアイスランド代表の主将として215試合に出場した経験もあり、オーストリア代表、ドイツ代表で指揮を執るなど実績は折り紙付きだ。
リオ五輪後、欧州などの強豪から多数のオファーを受けていたシグルドソン氏だが「お金の問題ではなく人生の決断だった。日本代表のために力になりたかった」と就任の理由を説明。国際ハンドボール連盟(IHF)による15年のコーチ・オブ・ザ・イヤーにも選ばれた“大物釣り”に成功した日本協会の蒲生晴明専務理事は「19年世界選手権、そして20年東京五輪に向けて世界最高の監督を招へいできた。これが(日本浮上の)最後のチャンスかもしれないので、勝負しないといけない」と興奮気味に話した。
日本は過去、72年モントリオール五輪の9位が最高で、五輪の舞台から28年間遠ざかっている。それでも渡辺佳英会長は「リオ五輪出場を逃した悔しさをバネに、東京ではメダルを獲れるくらいまで指導してほしい」と新指揮官への大きな期待を口にした。
代表チームの変革プランについて、新監督は「現時点で日本と世界ではフィジカルに差があるが、五輪までの40カ月でその差を埋めていければいいと思ってる。課題はフィジカル強化、プレッシャーがかかる場面で力を発揮すること。そのためには経験が必要」と説明した。
さらに「具体的にはこれから日本協会と話を進めて詳細を決めたいが、私はとても厳しくやる。選手には100%の規律を求めるし、上達したいと思わない選手は来なくていい」と鬼軍曹の一面ものぞかせた。どんなに実績のある指導者でも日本にフィットするかが最大の焦点になるが、新指揮官は百も承知。「海外のスタイルをコピー&ペーストするだけではダメ」と強調した。
00~03年に日本リーグの湧永製薬でプレーした経験もあり、その後も毎年のように来日している知日家。日本の生活にも慣れており、好きな食べ物は「寿司、刺身、焼き肉、ラーメン、ギョーザ…オール、全部ね!」と唾を飲み込んだ。「日本のスタイルで3年間プレーした経験もある。守備ではファイトし、攻撃は素早くアタックするという私の哲学と、日本の哲学をミックスして、クイックな現代ハンドボールをつくっていきたい」と青写真を描いた。
交渉役を務めた蒲生専務理事は「彼は日本通なので心配はない」と不安を一掃。「我々がずっと以前から狙っていた人物で、たまたまタイミングが合い、彼も日本のために何かしたいと。是非一緒にやろうと話を進めて今日に至った」と積年の片思いがようやく成就したことを明かした。
13日に行われた就任会見には、20年東京五輪のエンブレムのバッジ胸につけ「組市松紋」風のシャツに藍色のネクタイをコーディネートして臨んだ“青い目のサムライ”。ラグビーW杯で旋風を巻き起こした日本代表のエディー・ジョーンズ前監督のように、ハンドボールでも「ダグル・ジャパン」が世界を席巻する日が来るかもしれない。(デイリースポーツ・藤川資野)