【スポーツ】アイホ娘、ソチ五輪後の現実を乗り越えて…平昌で競技の未来切り開く
アイスホッケー女子日本代表「スマイルジャパン」が北海道・苫小牧で行われた最終予選で、3戦全勝の圧倒的な強さを見せつけて2大会連続の五輪出場を決めた。全競技を通じて日本勢の平昌五輪出場権獲得第1号。日本は女子の競技が初めて実施された1998年長野五輪に開催国枠で出場し5戦全敗。4大会ぶり出場の前回ソチ大会も5試合全て敗れており、1年後の大舞台で悲願の五輪勝利に挑む。
苦い記憶があるからこそ、ただ喜んでばかりはいられなかった。五輪決定後、涙を流したGK藤本那菜(ボルテックス札幌)は、すぐに1年後の夢舞台を見据えた。「予選は通過点。チームは五輪のメダルを見てる」。出るだけでは終わらない。本番での戦いに、照準を定めた。
4年前、ソチ五輪最終予選で14年ぶりの五輪出場を決めると、ピザ屋や居酒屋でアルバイトなど苦労しながら競技を続ける選手たちにスポットが当たり、一時的な“フィーバー”が巻き起こった。ソチ五輪までの1年間で大きく露出は増え、連盟も代表選手も企業の支援を受けられるようになった。それまで自己負担もあった海外遠征の費用も出るようになり、確かに環境は良くなった。ただ、本番のソチ五輪で5戦全敗に終わったこともあり、注目は一気に下火になった。
日本アイスホッケーの聖地・苫小牧で行われた今大会。この日、会場は3111人の観衆で超満員となったが、通常の公式戦は「30人ぐらい」(FW大沢主将)。この3年で離れていったスポンサーもある。強化費も徐々に減少していった。
アイスホッケー全体を見れば、何とか強化態勢が整っているのはスマイルジャパンのみ。男子や年齢別のジュニア世代の強化まで強化費が回っていないのが現状だ。男子代表は今回も五輪を逃した。今回、女子が逃せば、再び“冬の時代”がやってくる可能性すら合った中、重圧に耐え抜き切符を勝ち取った。
1年後の平昌五輪。アイスホッケーの未来を切り開くための戦いになる。大沢主将が「ここがゴールじゃない。スタートラインに立っただけ」と話せば、藤本那も「注目してもらいたい。それがアイスホッケーの普及に繋がれば」と、力を込めた。狙うは悲願の五輪初勝利だけでなく、メダルという確かな結果。舞い戻ってきた夢舞台で、今度こそ最高のスマイルを咲かせてみせる。(デイリースポーツ・大上謙吾)