【スポーツ】NFLに挑むジャパニーズブラザー

 アメリカンフットボールの最高峰、NFLの日本人初プレーヤーを目指して奮闘する兄弟がいる。Xリーグ・パナソニックインパルスのキッカー佐伯栄太(29)、眞太郎(25)だ。二人はともにアメフット日本代表経験者。「チャンスがあるからには、アスリートとしてトップを目指すべき」と二人で力を合わせて挑戦を続けている。この2月の渡米では「NFLコンバイン」というセレクションでトップの成績を残し、日本人で初めてスカウトマンがチェックするビデオに映った。それも二人そろってだ。

 アメリカンフットボールは役割が細分化されたスポーツで、キッカーはフィールドゴール(FG)の成功・不成功が得点、さらには勝敗に直結する重要なポジションだ。

 栄太は桃山学院大2年でアメフットを始めたが、それまではプロを目指したサッカー少年だった。高3時には大阪・清風高で府大会決勝進出。全国出場は逃したが、府内トップ選手の一人だった。ただ、3月のW杯予選日本代表に選ばれた一学年下のMF倉田秋(G大阪)や一学年上の元日本代表FW家長昭博(川崎)らトップクラスの選手を間近で見て、現実を知った面もあった。アメフットに戦場を変え、可能性に懸けたいと思った。

 同じく眞太郎も元サッカー少年。中学ではG大阪ジュニアユース堺に所属するなど能力は高かったが、関西学生リーグの強豪・立命大に進学すると、兄の影響もあってアメフットを始めた。大学4年時には56ヤードの関西学生最長FG成功記録を更新。昨季のXリーグの優秀選手である「オールX」にも選ばれた。普段は二人とも所属のパナソニックで一般社員と同様に業務をこなすサラリーマンアスリートだ。

 「NFLコンバイン」には全米から約100人が集結し、中には元NFLプレーヤーやドラフト指名選手もいたという。優秀者はNFLのスカウトマンがチェックするビデオに映ることができる試験だ。

 栄太は7年前から、眞太郎も学生時代から渡米を続けてきただけに、今回は「自分たちからアピールしたいと思っていた」(栄太)とスカウトに手渡せるようなレターやハイライト動画も作成。慣れない英語も積極的に使った。

 コンバインでは、50から65ヤード(45から60メートル弱)の長い距離のFGを2人そろって成功。本場仕込みのキッカーの中で優秀者トップ10に入り、NFLでのプレー経験があるような選手とも渡り合った。ビデオにもバッチリ登場。「日本人がここまで高いパフォーマンスをしたことに驚いていた」と眞太郎が振り返ったように、現地の反応は上々だった。

 得られたのは、夢に徐々に近づいているという実感だ。「渡米前より100倍驚いている」と眞太郎。今後はNFLの選手登録枠(ロースター)入りを目指してアピールを続けることになる。

 二人は同じポジションを争うライバルでありながら、ともに夢を追う最高のパートナーだ。「2人でなら、日本人がまだ行ったことのないところまで行けるんじゃないかなって思える」と栄太は言う。「意地でも何かをつかみたい」とは弟の眞太郎。“ジャパニーズブラザー”が本場米国を驚かせる日は、そう遠くないかも知れない。

(デイリースポーツ・國島紗希)

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