【野球】すがすがしく甲子園を去った名将

 名将はすがすがしい表情で聖地を去った。今センバツでの勇退を決めていた報徳学園・永田裕治監督が、30日の準決勝で履正社に敗戦。23年間の監督生活に終止符を打った。

 大会開幕直前。「今回はスマイリー永田で行くわ」と宣言していた。言葉通り、大会中はこれまでとは様子が一変。感情表現が豊かで、何度も素の「永田裕治」が聖地に出現した。

 試合前後の取材から冗舌だった。以前は型通りの受け答えが多かったが、今大会は思ったことを素直に口に出していた。

 1回戦・多治見戦の開始前は、「選手には『甲子園は53歳でも緊張する。人生でこんなことはないから肌で感じてこい』と言いましたよ。そういう風に言われた方が楽でしょう。(元済美監督の)上甲さんが『60歳でも緊張する』と言ったのを、引用させてもらいましたけどね(笑)」。負ければ退任となるため神妙な雰囲気で取材する報道陣を、ジョークを交えて笑わせた。

 2回戦・前橋育英戦後はエース・西垣を絶賛。「西垣には去年の秋の大会が終わって、『今のままでは甲子園に出ても注目されへんぞ。あっと言われる練習をするか』と言うたんですよ。そしたら『ついていきます』ってね…。あいつはデリケートで大会前には帯状疱疹(ほうしん)が出て、1週間遅れたりしたんですよ。山間部の田舎から出てきて、ここまで成長してくれて…。うれしいですね」。わが子を見つめる優しい父親のような表情を見せた。

 試合中は達観した勝負師のようだった。これまでならベンチの中を動き回って、指示を出すシーンが多かった。今大会はベンチの外野寄りに立って腕を組み、ほとんど動かなかった。

 教え子でもある次期監督の大角健二部長はその姿に驚いた。「落ち着いているし、腹をくくっているような感じでしたね」。選手を信じ、最後の教え子の活躍を脳裏に焼き付けていた。

 ただ、唯一、崩れたのが30日の準決勝・履正社戦。同点の六回に勝ち越すと、こらえきれずに珍しくガッツポーズ。その後、九回に逆転負けを喫したが、思う存分、野球を楽しんでいた。

 「あとちょっとやったんやけどなあ。悔しいなあ。でも、やっぱりこの歳になっても甲子園は最高やね。こんなに楽しくさい配できた甲子園は始めてやったわ」

 3月31日は報徳学園で最後のミーティング。その後、選手から花束と監督の似顔絵入り色紙、全員で寄せ書きした大きな野球ボールを受け取った。さらにマウンドで3度、胴上げ。教え子に囲まれ、最高の笑顔を見せた。(デイリースポーツ・西岡 誠)

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