【野球】オリ本拠地開幕の舞台裏 松井大阪府知事の「忖度」発言の意味
3月31日、野球ファンが待ちに待ったプロ野球が開幕した。オリックスは6年ぶりに本拠地でこの日を迎えた。晴れやかな日だったはずが、オープニングからどこか締まりのないものになってしまった。
開幕セレモニーに登場したのは松井一郎大阪府知事。神宮球場では小池百合子東京都知事が同じく開幕宣言と始球式に登場していた。地元の首長に晴れの日を飾っていただくのは、国民的スポーツであるプロ野球にとっては喜ばしいことだろう。ただ、彼らにはあくまで花を添える役でいてほしかった。
松井知事は開幕宣言の前にスピーチした。
「待ちに待ったオリックス開幕戦です。1億2000万人のファンのためにも期待したいところですが、やれ御堂筋パレードが見たいとか大阪のチームで日本シリーズをしたいとか、去年は期待を言い過ぎました。今年は謙虚に見守ります。選手の皆さん、ファンの心を忖度(そんたく)してください。2017年開幕を宣言します」
国民的関心事となっている森友学園問題の渦中にある人物の一人。籠池理事長が発言したこの問題のキーワードである『忖度』という言葉をわざわざ使って笑いを誘った。確かに満員のスタンドの一部では笑いは起こっていた。あくまで一部だが…。
始球式を終えると「スポーツ新聞の記者はホッとするわ。いつもキツイことばっかり聞かれてるから。毎日、森友やねん」と自虐ネタを飛ばした。
スピーチを振り返り「そら、良い忖度でしょう。オリックスファンは忍耐。選手にファンの気持ちをおもんぱかってもらいたいですね」とご満悦だった。
で、あらためて思った。開幕戦のプレーボール直前に知事が目立つ必要はあるのだろうか?緊張感にあふれる選手たちに向かって「忖度して」と言って何になる?
知事のリップサービスの影響かどうかは分からないが、オリックスナインの動きは硬かった。エース金子は持ち味の制球を乱すし、バックはエラーを連発。三回には早くも円陣を組んで福良監督自ら「もうちょっとリラックスしていけ」と言わねばならいほどだった。そして延長戦の末、敗戦。そこから球団54年ぶりの開幕連敗、29年ぶりの本拠地開幕3連戦3連敗と負のデータが続々と出る結果となった。
松井知事に続き、4月1日は女優・吉田羊がさわやかな笑顔をふりまき、2日は女子プロ野球の投手が101キロのストライク投球でスタンドを沸かせた。もちろん、スピーチはなかった。
結果的に負けたから一緒なのかもしれない。けれど、松井知事には純粋に野球を楽しみにしていたファンの思いを忖度してもらいたかった。
ちなみに松井知事の京セラドーム大阪での始球式は一昨年、昨年も負けており3連敗中である。(デイリースポーツ・達野淳司)