【野球】ドラフト候補左腕の東西怪物打者の印象 “柔の清宮、剛の安田”
大阪桐蔭の優勝で幕を閉じた今春のセンバツ。2人のスラッガーが大きな注目を集めた。早実・清宮幸太郎内野手と履正社・安田尚憲内野手(ともに3年)だ。準決勝で高校通算50号を放った安田はもちろん、ノーアーチだった清宮も、他選手にはない打球の高さで三塁打を放つなど存在感を示した。
何かと一緒に取り上げられることが多い左の大砲同士。では、投手の目からは、どんな違いが見えたのか。2人と公式戦のマウンドで対峙(たいじ)した日大三のドラフト候補左腕・桜井周斗投手(3年)が、口にした感想が興味深かった。
桜井は昨秋東京大会決勝で、清宮から5打席連続三振を奪って脚光を浴びた。高校生離れした鋭いスライダーが絶対的な武器。センバツ初戦の履正社戦では、安田からも3打席連続三振を奪った。その左腕いわく「オーラみたいなのは、清宮君の方が感じた。安田君の方が『これしか待たない。意地でも食らいつく』という感じが高校生らしかった」という。
安田には九回に外角直球を打たれ、左翼フェンス直撃の適時二塁打を浴びた。主砲を筆頭に履正社の上位打線には「対応しようじゃなくて、これしか待たないという割り切りがあった。(狙い球を絞って)自分のスイングができれば、それでいいと。スライダーは割と簡単に振らせられたけど(※桜井のスライダーは直球とほぼ同じ軌道から打者の手元で急激に変化する)、ストライクゾーンに入れにいった直球は必ず捉えてきた」という印象を抱いていた。
一方、清宮については、より幅広いボールに「対応しようというのがあった」と振り返る。西東京のライバルで、互いの手の内がわかっていることもポイントに挙げ「早実の方が履正社よりしつこかったかな」と話した。
大柄でもリストワークの柔らかさは天下一品。さまざまなボールについていける技術があるからこそ、清宮の打席での基本的なアプローチは「来た球を打つ」という姿勢で一貫している。現在開催中の春季東京大会でも選球眼を課題としているのは、早いカウントから厳しめのコースに手を出してしまう点を自分でも理解しているからだろう。
プロのスカウトが言及する2人の特性も、桜井の見方に近かった。フォーム的には「安田は軸足に体重を乗せて、ボールを引きつけてガンッと行くイメージ。清宮はどちらかというと、前のポイントでさばくタイプ」だという。そして「清宮も最近はギリギリまで引きつけようとしているように見える。打ち方を変えようとして、差し込まれることが増えているのかも」と指摘する声もあった。
ともにプロ志望届を提出すれば、ドラフト1位指名は確実といわれるホームランバッター。ただ、特徴は対照的だ。“柔の清宮、剛の安田”。実際に対戦した投手のそんな印象も頭に入れて2人の打席に注目すれば、また違う楽しみが見つかるかもしれない。(デイリースポーツ・藤田昌央)