【野球】早実戦での痛恨エラーが糧、明徳義塾のエース北本の成長
高校野球の春の四国大会で、明徳義塾(高知)が昨秋に続く2季連続優勝を果たした。
原動力となったのはエース左腕・北本佑斗投手(3年)の粘り強い投球だ。初戦の鳴門渦潮(徳島)戦は先発で5安打完封。続く準決勝・帝京五(愛媛)戦、そして決勝・松山聖陵(愛媛)戦はともにリリーフでマウンドに上がり、冷静なマウンドさばきで勝利を呼び込んだ。
甲子園で経験した悔しさを糧に、エースはひと回り成長した。
今春センバツ初戦。北本は清宮幸太郎内野手(3年)を擁する早実を相手に初回から好投。4-2で迎えた九回に1点を失ったが、なおも1点リードで2死一塁まで相手を追い詰めた。あと1アウトで勝利を手中にできる場面で、相手2番打者が放ったゴロは北本の正面へ。打ち取ったと思われた打球はしかし、グラブをはじいた。後方に転がった球を拾って一塁に投げればアウトにできるタイミングだったが、焦った北本は球をつかみ損ねた。この失策で大きく流れが変わった。続く3番・清宮に四球を与え、4番・野村大樹内野手(2年)にも押し出し四球で同点に。そして延長十回、1点を失い4-5で敗れた。
痛恨のワンプレー。北本は「雰囲気にのまれてしまった。精神面で負けていた」と振り返る。センバツ後は「気持ちを切り替えるのが難しかった」とショックを引きずった。馬淵史郎監督(61)から「なぜあのゴロを取れなかったのかを考えろ」と課題を与えられ、何度も早実戦の映像を見返した。自分の弱さと向き合い、土壇場で四球を出した反省から「練習時間の半分以上は走り込んだ」と下半身を強化。肩が早く開いてシュート回転するクセを直すために、投球フォームも改造したという。
懸命の練習で悔しさから立ち直り、春の四国で頂点に立った。馬淵監督も「北本はストレートの軌道が良くなったし、スライダーの精度も上がった。自分の間合いで投げられるようになった」と成長を認める。北本が次に見据えるのはもちろん、夏の聖地マウンドだ。「まだ四球が多い。コントロールを良くして、夏はもっと簡単に勝てるピッチングをしたい」。今度こそ勝利をつかむために、エースはまだまだ強くなる。(デイリースポーツ・浜村博文)