【芸能】いしだ壱成が石川県に移住 音楽と演劇で地域活性化&5月は神戸で主演舞台
俳優・いしだ壱成(42)の主演舞台「午前5時47分の時計台」の神戸公演が5月16日にポートピアホールで幕を開ける。20日には俳優の父・石田純一(63)が1日限りのゲスト出演を果たし、舞台(神戸新聞 松方ホール)で初の親子共演が実現。注目される壱成だが、実は5年半ほど前に東京から石川県白山市に移住していた。“田舎暮らし”を志向する都市生活者は少なくないが、そのライフスタイルを実現した一人の役者に話を聞いた。
きっかけは、2011年3月11日の東日本大震災だった。
「あの日は舞台の稽古に行こうと自宅玄関を出た時に地震が来ました。(福島第1原発の)3号機などが爆発して、メルトダウン以上のことになったと聞いて、家中の窓という窓に目張りをして、念のために1週間は外に出ないようにして。そんな行為も周りの人には奇異に映ったようで、認識の違いですね。ただ、震災は別にしても、もともと東京から離れたいというか、田舎暮らしに憧れていました。都会にいることにも疲弊していたので、その年の秋か冬頃に、友人のすすめで白山に引っ越しました」
両親の離婚後、母に育てられた。その経験も移住の背景にあったようだ。「僕は東京生まれではあるんですけど、育ったのが屋久島や長野、山梨の山の中だったりするので、もともと田舎育ちだったんです。母と一緒に自給自足に近い生活をして。だから、もう1回、子供の頃に立ち返ってじゃないですけど」
自然豊かな新天地だが、そこに足りないものは文化ではないか。音楽と演劇による地域活性化に目覚めた。
「ライフワークというと大げさですけど、何か活性化できるものをやりたいと。大きなくくりで言うと“芸術”です。音楽や演劇を同時多発的にやっていけば、お役に立てるかなと。例えばDJイベント。白山にはなかなか施設がないので、隣の小松市や金沢市でライブハウスを借りて、通常は夜中にやるところを夕方5~6時にオープンし、早い時間帯は小学生の女の子が(レコードを)回すなど、子どもたちがDJで参加して。演劇では昨年、金沢21世紀美術館で『カルタゴの人々』という戯曲で主演させていただきました」
ところが皮肉にも引っ越し後に東京での仕事が増えた。白山と東京との往復はもっぱらマイカーだという。
「それまで名古屋や大阪の仕事が多かったのに、引っ越したら東京の仕事が増えて。それでも僕のベースは白山です、気持ちは!(笑)。体は東京にいても(白山の)家がどうなってるか心配です」
そして、神戸。昨年に続く再演は地方活性化の思いと地続きだ。「去年やり残したこともあり、もう1回チャンスがあるならと。課題は『ポップに演じること』。昨年は緊張感で張り詰めていたので、その辺をもんで消化して落とし込んで…」
阪神・淡路大震災の1995年、壱成は高視聴率を連発していた脚本家・野島伸司氏のドラマ「未成年」に主演するなど、東京の芸能界の“ど真ん中”にいた。当時は遠い世界の出来事だった街を舞台に、不惑を過ぎて2年連続の主役を張る。
「3・11の時もそうでしたけど、本当に人って無力だなと。1・17では高速道路がぺしゃんとなって、ビルが横たわっている生々しい光景をテレビで見ながら無力感に覆われていました。震災から1、2年後にバンドで神戸の野外ライブに出演したんですけど、皆さん笑顔で強いなと。泊まっていたホテルの窓ガラスの向こうに仮設住宅が見えて、自分ばかりがこんなところに泊まって…と思ったことを覚えています」
タイトルの通り、その震災がモチーフになった舞台。壱成は「背中を押してあげようとか、引っ張ってあげようとか、そんな偉そうな気分は毛頭なくて、見た方が自然と一歩前に進んでいただければ『御の字』かなと思っています」。中央からではないフラットな目線は、これからも白山をベースにした生活で磨かれていくだろう。(デイリースポーツ・北村泰介)
◆舞台「午前5時47分の時計台」公演日程 初日の5月16日に神戸ポートピアホール、19-21日に神戸新聞 松方ホール(20日と21日は昼夜2回の計5回公演)で。石田純一は20日の夜公演に出演。東京では6月2-4日に光が丘・IMAホールで5回公演予定。