【スポーツ】フィギュア女子 トリプルアクセル時代、到来は近い?
「トリプルアクセル」って何?
そう問われたら、細かい説明はできなくとも、多くの人が「フィギュアスケートのジャンプ」と説明できるだろう。トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を“公用語”にしたのは、やはり先月現役を引退した浅田真央さん。長年、日本中があの一瞬を、固唾(かたず)をのんで見守り続けてきた。
アクセルジャンプは、フィギュアスケートの6種類のジャンプのうち唯一前向きに踏みきるジャンプのため、見分けがつきやすい。世界で初めてトリプルアクセルを成功した女子選手は、92年アルベールビル五輪銀メダリストの伊藤みどりさんだった。世界で7人しか成功していない大技で、そのうち4人は日本人。伊藤みどり、浅田真央、中野友加里、そして14歳の紀平梨花(関大KFSC)だ。
年齢制限のため、来年2月の平昌五輪出場資格を持たない紀平だが、昨年9月のジュニアGPスロベニア大会でトリプルアクセルを初成功。今年2月に行われた大阪のローカル大会では、トリプルアクセル+3回転トーループ+2回転トーループという3連続の“異次元ジャンプ”を決めた。来季はフリーで2本のトリプルアクセル導入に前向きな姿勢を見せている。
その中、女子の若手選手にはトリプルアクセル習得を目指す動きが加速しているように感じる。4月の国別対抗戦の練習中に樋口新葉(東京・日本橋女学館高)が着氷。来季の導入を目指しているほか、世界ジュニア選手権銅メダルの坂本花織(神戸FSC)も練習中だ。指導する中野コーチは「オリンピックに出たいなら、武器がないと難しいから」と挑戦の意図を明かしてくれた。
また、横井ゆは菜(愛知・中京大中京高)は、昨年10月の西日本ジュニアで回転不足ながら片足着氷に成功。織田信成さんからも指導を受ける15歳の滝野莉子(大阪ク)は練習開始から約1カ月で、大阪のローカル大会で挑戦した。転倒したが「みんなが挑んでるので、ついていくためには自分も必要だと思った」と滝野。
トリプルアクセルが難しいジャンプであることに変わりはないのだが、多くのスケーターが「できる」という思いで挑戦している。その一端に、浅田さんの存在があることは間違いないだろう。浅田さんの映像を参考にしていると語った選手は本当に多い。
男子ではこの16-17シーズンでジャンプの高難度化が一気に進んだ。これまでトップ選手の多くが2種類の4回転を跳びこなしていた中、羽生結弦(ANA)が世界で初めて4回転ループを成功させると、シーズン後半ではネーサン・チェン(米国)が4種類5本の4回転を成功。“変革”の1年だった。
女子にも近い将来、高難度化の波が来る可能性は決してゼロではないはず。トリプルアクセルがあればいいというわけではないが、トリプルアクセルが当たり前になる日がいつか来るのかもしれないと、ワクワクしたシーズン終盤だった。まずは来季、2枠になった五輪出場枠を懸け“必殺技”を引っ提げて挑む選手が何人いるか、楽しみにしたい。(デイリースポーツ・國島紗希)