【野球】近大・田中監督、93年センバツV監督が高校&大学日本一狙う
関西学生野球リーグは14日、甲子園球場で行われ、近大が6-0で京大を下し、2013年春以来8季ぶり45回目の優勝を決めた。2014年に就任した田中秀昌監督(60)にとっては、初のリーグ制覇となった。全日本大学野球選手権大会(6月5日開幕・神宮、東京ドーム)では、中央大・宮井勝成総監督が早実と中央大で成し遂げた「高校と大学での日本一」に挑む。
田中監督は上宮(大阪)の監督だった1993年センバツで全国制覇。2011年夏には東大阪大柏原を初の甲子園出場へ導いた。上宮では黒田博樹(元広島)、元木大介(元巨人)、東大阪大柏原では石川慎吾(巨人)らを育成した名将だ。
近大は2013年に不祥事で榎本監督が辞任。後任として、当時は東大阪大柏原を指導していた田中監督が就任要請を受けた。
「僕はいい選手ではなかったし、(近大では)学生コーチでしたし。まさか、オファーがあるとは。何回も固辞したんですけど…」。周囲の後押しもあり、東大阪大柏原の監督を退任。母校を再建するために大学球界へ飛び込んだ。
高校野球では数々の結果を残してきた名将でも、大学ではなかなか結果が伴わなかった。昨年は2季連続で5位に沈んだ。「大学生の指導は難しい。1/3が大人で、2/3が子供というか。高校時代は素直な気持ちでやっていても、大学に入ると大人になったような感じなんですよね」。
相互理解を深め、意識を高めることに努めてきた。昨年11月の新チーム始動時には、日本ハム・大谷が花巻東時代に作成した「目標設定シート」を全選手に書かせた。そのコピーを所持し、節目でシートを基にして選手と面談。1学年2日間をかけて全選手と話をしてきた。
試合前日には寮に宿泊し、選手とコミュニケーションを取る。リーグ戦の前日にはマネジャーや、4年生と生駒市内の「音の花温泉」へ向かう。小さな積み重ねで、チームの一体感を生んでいった。 「1、2、3年目とうまく行きませんでしたけど、粘り強い試合ができるようになってきた。言ってきたことがやっと浸透してきたかなと思います」。リーグ戦を制してプレッシャーから解放されると、ほっとした表情で教え子をねぎらった。
田中監督には夢がある。就任以来、母校再建と、関西の大学野球を全国区にすることを目標に掲げている。「スターがいれば注目してもらえる」と、2015年のU-18W杯では日本代表の早実・清宮へ、近大の学校案内を手渡したほどだ。高校野球と同様に、関西の大学野球の魅力を高めるために、さまざまなプランを思案している。
当然、注目される6月の全日本大学野球選手権でも頂点を見据える。同大会では1998年の近大を最後に、関西学生野球連盟から優勝校が出ていない。「関西ここにありというのを見せたいですね」。田中監督が「高校と大学での日本一」という偉業に挑む。(デイリースポーツ・西岡誠)