【ライフ】レジェンド記者とぜいたくサッカー談義
W杯10回の取材経験を誇るサッカージャーナリストと、ざっくばらんにサッカー談義ができる-。2015年に日本人として初めてFIFA会長賞を受賞したサッカージャーナリストの賀川浩氏が、取材資料として集めた蔵書など約3500冊を地元の神戸市立中央図書館に寄託。14年4月から「神戸賀川サッカー文庫」を開設したのと合わせ、15年10月から原則毎月最終週の土曜日に「賀川サッカーサロン」と題し、サッカーファンたちと意見を交わしている。
サッカー好きには、たまらないひとときだ。27日で19度目の開催となった「賀川サッカーサロン」。神戸市立中央図書館2号館4階の一室で、参加者は10人ほど。こぢんまりとした集まりながら、中には女性の姿も。今回は賀川氏の最新著書「このくにのサッカー」がテーマ。プレーヤーや指導者、変わったところではサッカーショップ経営者など13人と賀川氏の対談をまとめた一冊だ。多様な人物とのインタビューでの裏話に、参加者も興味津々。対談相手の1人・元なでしこジャパンの澤穂希さんについて語っていると、話題はヘディング技術へ。
「高く跳ぶために競っているとき、彼女は相手に持ち上げてもらうようジャンプしている」と賀川氏。女子サッカー界のレジェンドが身に着けた卓越した技についての解説に、思わず参加者から「知らなかった」という声が漏れた。「海外サッカーについての話になると、歴史や民族性からも斬っていくんです」とは、賀川氏を担当する神戸市中央図書館の松永憲明さんの証言だ。明瞭、快活な分析力は、92歳の今なお衰え知らず。
参加者の質問から、話題はウルグアイのサッカー事情へと発展。「これじゃあ、『このくにのサッカー』じゃなくて、『そのくにのサッカー』みたいですね」という声に、賀川氏は「ヤツらのサッカーだね」とすかさず返答。まさに生き字引として、サッカーを「伝える」情熱は尽きることがない。
もちろん「神戸賀川サッカー文庫」には、サッカー通をうならせるお宝がそろっている。図書館2階にある一部屋を使用し、サッカー関係者の単行本からJリーグ球団の応援雑誌まで、数多くの書籍が棚にびっしり。中には賀川氏が集めた海外雑誌の切り抜きをまとめたものもあり、ここでしか目にできない貴重な資料を閲覧できる。賀川氏のW杯取材プレス証やFIFA会長賞の記念メダル、ドイツ1部・ドルトムント香川真司のサイン入りユニホームなど、ミュージアム顔負けのグッズも展示されている。開設当初は火、木、土曜日の13時30分~17時と開放時間が限定されていたが、昨年11月から図書館会館時の9時15分~17時開室とより楽しめる機会が増えた。賀川氏は所用がない限り火曜日と土曜日には訪れており、ここでもサッカー談義をするチャンスがある。
「サッカーの試合をする楽しみ、練習をする楽しみはもちろんあるけど、サッカーの話をすることだって楽しいもの」。もともと、仲間たちとサッカーの話をする場を望んでいたという賀川氏。プレーや観戦とは一味違う、サッカーを「読む」「語る」面白さを実感しに、図書館へ足を運んでみては。(デイリースポーツ・佐藤 敬久)