【スポーツ】「嫌い」な競技をもう一度 異色のスケーター三輪準也が平昌目指す

 現役引退は、アスリートにとって最も難しい決断の一つだと思う。スピードスケート・ナショナルチームの三輪準也(23)も一度はその決意を固めたひとり。大学卒業を機に引退し、氷から離れて社会人となったが、スケートへの思いが再燃。努力が実り、今季から日本代表強化選手に指定された。

 そもそも「スケートは嫌いだった」と三輪は言う。頭の中は「なんでこんなに練習しないといけないんだ」という思いでいっぱい。はやくも中学卒業の段階でその気持ちは芽生えていた。それでも全国高校総体では1000メートルと1500メートルで優勝を経験。法政大では「最後はほぼ練習も行かずに、月2~3回氷乗るくらいで惰性で過ごしていました」とためらうことなく話したが、大学日本一に貢献した。

 「やっと終わったよ~」と大学を卒業。スケートとは無関係の採用で株式会社フィットラボという医療機器メーカーに入社し、営業マンとして働いた。待ちに待ったスケートのない生活がやってきたはずだった。

 ところが、何か物足りなかった。浮かんできたのは「ちょっとまだやり残したな」という後悔の念。そして振り返れば「本気で頑張ったことがなかった」とも思った。練習するかつての仲間の動画を見ながら「自分、どこまで行けたんだろうって気持ちになって」引退撤回を決意。スケートに専念するため退社を申し入れると、社長が好意でスケート部立ち上げを勧めてくれた。現在も所属先は新卒で入社したフィットラボ。練習に専念できる環境を用意してもらっているという。

 「辞めてみたらやっぱりスケートが一番大切なんだなって気付いた」と三輪。昨夏はドイツのコーチに指導を仰ぎ「自分の人生で一番厳しかった」というトレーニングを敢行した。メキメキと実力をつけ、23歳以下で競うユニバーシアードでは1500メートルで銅メダルを獲得。世界の舞台で戦う仲間を見て憧れた、ナショナルチームメンバー入りまでたどり着いた。

 社会人になってからの競技復帰は特にハードルが高く、三輪の場合、入社した企業を含めた周囲の理解があったことが大きく影響したことは間違いない。それでも、彼のような順風満帆ではない競技生活を経験したオリンピアンやメダリストが生まれることは、大きな意味を持つと思う。三輪自身も「五輪に行きたいだけじゃ、このチームにいたらダメだと思う。五輪で勝てるように練習してきます」と力強く話していた。平昌五輪まであと7カ月。再燃したスケートへの熱い熱い思いを、世界の舞台で見せてほしい。(デイリースポーツ・國島紗希)

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