【野球】大歓声が示すエルドレッドの人柄、ママチャリで広島の街へ出掛ける姿も
セ・リーグで首位を走る、広島の大きな原動力は、セ界最強の打撃陣だ。チーム打率、得点、本塁打で他5球団を押しのける。交流戦に入っても圧倒的な攻撃力は健在で、過去に3度の勝ち越ししかない“鬼門”でもチームの勢いは止まらない。
その中でひときわ歓声が上がるのがエルドレッドだ。スタメン出場時はもちろんのこと、代打で打席に立つと大歓声に包まれる。12年途中に初来日。13年には、初のCS進出がかかった9月25日の中日戦で、浅尾から決勝2ランを放った。「あのホームランが一番、印象に残っている」。14年には本塁打王に輝き今季は、球団の外国人選手としては歴代単独2位となる通算113本目の本塁打を記録した。史上最強の助っ人と呼ばれても違和感がない活躍を見せている。
記録も去ることながら、豊かな人間性でチームから愛されている。来日当初から接し続けている2人の通訳が、普段着の彼を語ってくれた。松長通訳は第一印象から好感を持ったという。「最初は、大きなビジネスマンが来たんだと思ってしまいました。握手の仕方とか、人の目を見てしっかりと話ができるところとか、すばらしいなと感じました。性格的には本当にやさしいです」。西村通訳は、彼の同じ外国人選手への接し方に関心しきりだ。「外国人選手は日本で成功するために来ている。だから他の外国人選手はライバルなんです。だから自分の持っている情報を伝えたくない。過去にそういう選手はいましたし、もちろん、ライバルだからそういうこともありえる。でも彼は違うんです。投手でも野手であっても、自分の知っていることは全て伝えています」
通訳という仕事をする上で、助言を求めたこともある。例えば2軍へ降格する場合だ。松長通訳は「もちろん、首脳陣が言う言葉をそのまま伝えるのが大事ですが、日本とアメリカでは受け取り方が違う可能性がある。アメリカでは、どういう感じで言われるのか、聞いたことがあります」と振り返った。この場合はデリケートなことだ。プライドが高い選手もいる。決して誰にでも聞けることではなく、エルドレッドがおおらかな性格だからそできた質問。通訳という仕事を通して、チームを円滑にする術を学んだ。
今季から新たに異例ともいる2年契約を結び、18年までカープでのプレーが決まった。休日には広島の街を、かつて在籍していた外国人選手から譲り受けた“ママチャリ”で買い物に出掛ける。あの大きな体だけに、ひと目で彼を分かるが、おかまいなしだ。サインを求められれば快く応じる姿が何度も目撃されている。(デイリースポーツ・市尻達拡)