【プロレス】現王者は100代目、日本最古の王座・アジアタッグは歴史遺産だ
昭和の時代に「人に歴史あり」というテレビ番組があったが、チャンピオンベルトにも歴史がある。8日に東京・新宿FACEで行われた、王者の渕正信、大仁田厚組が前王者の青木篤志、佐藤光留組と2度目の防衛戦を行うアジアタッグ選手権試合(20日、北海道・帯広市総合体育館)の会見でのことだ。
席上、渕が年季の入ったチャンピオンベルトを眺めながら、「今日、こうやって歌舞伎町に来て、昔のことを思い出したよ。それを考えたら、2人で歴史のあるアジアタッグの防衛戦をやる、そのこと自体がオレはうれしいね。今までこの2人がプロレス界で40年以上生き続けてきた生き様というのを、前チャンピオンチームにぶつけたい」と感慨深げに話した。
渕が言うように、現在は全日本プロレスが管理するアジアタッグ王座の歴史は古く、日本プロレス界に現存する最古の王座だ。その歴史は1955年、日本プロレスが開催したアジア選手権のタッグ部門で優勝したキング・コング、タイガー・ジョキンダー組が初代王者に認定されたことに始まり、代を重ねて、現王者の渕、大仁田組で100代となった。
1966年にジャイアント馬場、吉村道明組がインターナショナルタッグ王座(後にPWF世界タッグ王座と統一されて世界タッグ王座に)を獲得してからは2番手格の王座となったが、過去の王者には力道山、豊登、ジャイアント馬場、アントニオ猪木、坂口征二、大木金太郎、天龍源一郎、小橋建太、ジン・キニスキー、ザ・デストロイヤー、キラー・カール・コックス、ダイナマイト・キッドら大物が名を連ねている。昨年には、1970年代後半に大熊元司とのタッグで同王座を4度獲得したグレート小鹿が35年ぶりに挑戦するという、長い歴史を持つ王座ならではの記録的な出来事もあった。
王座に輝きを与えるのが王者ならば、その輝きに深みを与えるのが歴史。際限なく増え続ける団体の数に比例するかのように王座も乱造され続けている中で、60年以上も受け継がれてきたアジアタッグ王座は日本プロレス界の歴史遺産と言っていいだろう。王座を作ることは簡単だが、歴史は変えることも真似ることもできない。この世にプロレスがある限り、この王座もあり続けてほしいものだ。(デイリースポーツ・洪 経人)