【スポーツ】個の能力史上最強の新リレー侍。頂点への鍵は“お家芸”バトンパス
日本陸上連盟は激闘の日本選手権を終えて、8月の世界選手権(ロンドン)の日本代表を発表した。注目の短距離では、日本選手権で圧巻の走りを見せ100、200メートル2冠を達成したサニブラウン・ハキーム(18)=東京陸協=、100メートルで2位に入った多田修平(21)=関学大=、同3位のケンブリッジ飛鳥(24)=ナイキ=、200メートルの飯塚翔太(26)=ミズノ=が選出。100メートルで4位に終わった桐生祥秀(21)=東洋大=はリレー代表候補に名を連ねた。
16年リオデジャネイロ五輪で銀メダルを獲得した男子400メートルリレー。登場時の“侍ポーズ”と、世界を驚かせた走りで、“リレー侍”と呼ばれた4人からは山県亮太(セイコーホールディングス)が代表落選。ただ、サニブラウン、多田の目覚ましい成長により、“新リレー侍”は、個の能力では歴代最強といえる布陣が揃った。
◆リオ五輪布陣と自己ベスト
1走山県亮太 10秒05
2走飯塚翔太 10秒22
3走桐生祥秀 10秒01
4走 ケンブリッジ飛鳥 10秒10
合計タイム 40秒38
※自己ベストは当時
◆新リレー侍予想布陣
1走多田修平 10秒08
2走ケンブリッジ飛鳥 10秒08
3走桐生祥秀 10秒01
4走サニブラウン・ハキーム 10秒05
合計タイム 40秒22
全員が10秒0台。自己ベストの合計タイムではリオ五輪を0秒16上回る。また、飯塚も自己ベストを10秒22から10秒08まで伸ばしており、選手層も一気に厚くなった。
リオで0秒33差で敗れたジャマイカ打倒へ、鍵になるのはバトンだ。世界屈指のスタートを誇る山県に代わる1走は、同じくスタートに定評のある多田が濃厚。2走は直線に強いケンブリッジか、リオで2走を務めた飯塚。3走はリオ五輪で圧巻の爆発力を見せた桐生か。日本が導入しているアンダーハンドパスの経験が少なく、バトンに不安を残すサニブラウンは、起用されるとすれば負担が少ないアンカーが有力だ。
多田とサニブラウンは、3月に宮崎で行われたリレー合宿に参加しておらず、代表の緻密なバトンの経験が乏しい。ただ、リオ五輪でも急成長で代表入りしたケンブリッジが代表歴が乏しかったが、培ってきた過去の膨大なデータからそれぞれに合った距離感を分析し、本番でしっかりと合わせきった。
リオ五輪では、あのウサイン・ボルト(ジャマイカ)に「脱帽だ」と言わしめた日本のバトンリレー。今回は世界選手権まであと1カ月。これまで培ったノウハウをどれだけ新布陣で落とし込めるか。歴代最強の個の能力に、“お家芸”のバトンパスが融合した時、日本が短距離で世界の頂点に立つという夢が、現実になるかもしれない。(デイリースポーツ・大上謙吾)