【野球】阪神、逆転Vのカギは「投の小野」、「打の2、8番」
セ・リーグのペナントレースの火が消えつつある。連覇を狙う広島が独走態勢。25日終了の時点で貯金は26、2位・阪神、DeNAとは10ゲーム差と大きく引き離している。17日からの後半戦最初の3連戦。1位、2位の直接対決も2勝1敗と、広島に軍配が上がった。阪神の残り試合は57。確かに状況は厳しいが、まだ“絶望的”なわけではない。
「まだ、まだ。何が起こるか分からんやろ。2008年のシーズンも経験したから。あれ、あれ、という間に差が縮まって。気が付いたら追い越されていた感覚だったからね」
広島・新井の胸にはいまでも深い傷が残る。阪神にFA移籍して入団した初年度。チームは序盤から快進撃を続けた。2位争いをした巨人&中日に最大12ゲーム差を付け、7月22日にはマジックナンバー46を点灯させた。だが、巨人が9月に引き分けを挟んで13連勝など猛追。阪神は直接対決で7連敗を喫して、シーズン残り3試合で首位を明け渡した。
ここで注目したいのは同年、7月終了時点でのゲーム差だ。貯金28で、巨人とは9・5の差があった。現在10ゲーム差。数字的には今季とあまり変わらないのである。8月終了時点でもまだ6差。逆転不可能な数字ではない。「シーズンは、そんなに甘いもんじゃない。もうひと山、ふた山は絶対あるから」。新井は自身の苦い体験を、後輩たちに口酸っぱくして伝えている。
逆を言えばまだ、阪神に逆転の目はある。条件は直接対決の勝利と、同年の巨人のような大型連勝か。広島との対戦は残り11試合(現在7勝7敗)。香田投手コーチは言う。「上にいるのは広島なので。勝たないことには上にいけない。広島に勝てるような人たちに、行ってもらうつもりです」。今後は先発投手の状態、相性を考えながらぶつけていくという。その中で後半戦のキーマンに挙げたのは、新人の小野だ。
「ランディや秋山、岩貞、能見…。この辺りが頑張ってくれるのは当然としてね。プラスアルファとして、やっぱり小野でしょうね。勝ちはなかなか付いてないけど、いいところは出してくれている。これから勝ち星を増やしてくれたらね」
桑原-マテオ-ドリスとつなぐ勝利の方程式に、藤川、高橋らが集う中継ぎ陣は盤石。夏の暑さに加え、長期ロードが始まるだけに、同コーチは「これから暑くなる。若い力が必要だからね」と続けた。安定感の中に爆発力を求める投手陣。一方、攻撃陣のキーマンは…。「監督も考えていることだけど、やっぱり2番、8番かな」。平野打撃コーチは打順にフォーカスして、打“線”として攻撃の厚みを求めている。
「ウチの打線を考えたら、2番、8番が打った時に点がよく入る。7番を入れて、2、7、8。そこが機能すれば、分厚い線になってくる。次に、次にとつなげていけるから」
上本が打点を挙げた17試合は13勝4敗。8番打者の打点は20試合で16勝4敗だ。「上本は分かってやってくれているよ。2番、8番が強いと相手にプレッシャーを掛けることができる。クリーンナップも楽にしてあげることができるからね」(平野コーチ)。広島には追われる重圧もあるだろう。カギは「投の小野」、「打の2、8番」。投打の充実が逆転優勝には欠かせない。(デイリースポーツ・田中政行)