【競馬】王者ノーザンファーム 新兵器でさらなる躍進~2017年夏・牧場探訪記
梅雨明け宣言が出たばかりの7月末、福島県にあるノーザンファーム天栄を見学させていただいた。同牧場には、これまで何度かお邪魔させてもらっていたが、今回取材に訪れた目的はひとつ。今年4月にリニューアルされた坂路コース(全長900メートル)の見学だ。
以前は約28メートルあった坂路の高低差を4カ月かけて改修し、約36メートルに高められた。美浦の坂路は18メートル、栗東は32メートルなので、まさに東西トレセンに匹敵する調教施設になったといっても過言ではない。この坂路で鍛えられていたアエロリットとレイデオロが、それぞれ今春にNHKマイルC、ダービーといった大レースを制しており、既に高い成果として現れているのだ。
午前の調教が終わってから、実際に坂路を歩いてみたところ、傾斜をつけられた“海辺のビーチ”という印象を受けた。当日はそこまで暑くはなかったものの、1キロ近い馬場をマイペースで歩いているだけで、自然と汗が流れ落ちてきた。歩くだけならまだしも、ほぼ全速力で走るとなると…かなりキツい。確かに、ここで毎日ランニングしたら脚が速くなりそう(な気がする)。
牧場の木實谷場長は話す。「新しい坂路の運用を開始して3カ月少々がたち、ようやく効果を実感してきたところです。改修直後は登るのに精いっぱいだった馬も、手応え良く上がってこられるようになりましたし、競走結果としても勝率、勝ち鞍ともに着実に数字が伸びてきています。今後もより高い競走成績を求め、坂路の効果的な活用方法を模索していきたいですね」。
目下6年連続でJRA生産者リーディングを獲得中のノーザンファーム。その一翼を担うノーザンファーム天栄での調整馬は、7月に3週連続重賞V(ラジオNIKKEI賞=セダブリランテス→七夕賞=ゼーヴィント→函館記念=ルミナスウォリアー)を達成するなど、さらに勢いを増している。この夏以降も“新坂路”で鍛えられた馬たちから目が離せない。(デイリースポーツ・刀根善郎)