【野球】ヤクルトの歴史的大逆転劇を呼び込んだファンの底力

 見えない力が、選手の背中を後押ししていた。7月26日、ヤクルトが中日を相手に最大10点差をはね返す歴史的な大逆転勝利。一夜明けても余韻の冷めない神宮球場で、真中監督がその要因として挙げたのが“ファンの力”だった。

 「選手の集中力、勢いもあった。何より、ファンが雰囲気を作ってくれた。営業の方の頑張りもあって、昨日はいつも以上に元気のある声援を感じた。青山の一等地にあるからなのか、普段、神宮のヤクルトファンはガツガツしていないんだよね。でも、昨日はこっち(三塁側)にもたくさんいて。選手は恥ずかしい試合はできないという気持ちに、よりなったと思う」。

 故障者が続出した影響もあり、チームは断トツの最下位に低迷。本拠地でも盛り上がりに欠ける試合が続いていたが、この日は違った。5年目を迎えたイベント「TOKYO燕プロジェクト」の開催日で超満員。今年は過去の4年と違い、三塁側や相手チームのファンが座る中堅から左中間席までの来場客にも無料でヤクルトの応援用ユニホームが配布され、球場全体が黄緑色に染まっていた。

 五回までに10点をリードされる厳しい展開。だが七回に中村が1号2ランを放つと、沈黙していたヤクルトファンが一転して大声援を送り、球場の雰囲気が変わった。八回にはバレンティンの2ランなど、打者一巡の猛攻で一挙8点。試合を振り出しに戻すと、十回に代打・大松の一発でサヨナラ勝ちした。

 営業部の伊藤直也氏は「本拠地をできるだけスワローズファンで埋めようという取り組み。勝利も合わさって、ファンの方には喜んでもらえた」と語り、営業部次長の黒石誠治氏も「チームがこういう状況でも、燕プロを成功させよう、盛り上げようという思いだった。監督からもそう言っていただき、非常にうれしい」と喜んだ。

 球団の“仕掛け”がはまり、ファンとともに引き起こした奇跡の大逆転劇。バレンティンは「チーム状況がすごく厳しくても、ファンが球場に来てくれている。選手にとってはモチベーションが上がるし、お客さんが求めるゲームをしなくてはいけない」と、口にした。現場も職員も、プロとしてあるべき姿を再認識する大きな1勝となった。(デイリースポーツ・佐藤啓)

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