【野球】清原の本塁打実況の元ABC植草アナ 広陵中村の2発に「私が実況していたら…」
甲子園に新たな本塁打伝説が作られた。広陵・中村奨成捕手(3年)が22日、全国高校野球選手権の準決勝・天理戦で2本塁打を放ち、個人1大会通算6本塁打。1985年にPL学園・清原和博が作った記録(5本)を塗り替えた。
その清原が4、5本目の本塁打を放った85年夏の決勝戦・PL学園-宇部商を実況し、後々まで語り継がれる「甲子園は、清原のためにあるのか!」の名文句を残した元ABCアナウンサー・植草貞夫さん(84)はこの日、中村の2本塁打を自宅のテレビで見届けた。
32年ぶりの記録更新に興奮冷めやらぬ様子で「打った瞬間、入ったと分かるホームラン。プレッシャーもある中で、1打席目からいとも簡単に放り込んだ。すごいと思いました」とたたえた。
数々の名選手を感性あふれる実況で彩った植草さん。「『甲子園は清原のために-』は実況する中で、思わず口から出てきた言葉。今日も、もしこの試合を私が実況したら、どんな言葉を中村選手に使うかな、と自分に問いかけながら見ていました」と、アナウンサー目線でこの試合の感動を表した。しかし、その答えは「難しいですね。清原選手とはタイプも違いますし」と、最後まで浮かばないままだったようだ。
勝負を挑んだ天理ナインにも賛辞を送った。「相手バッテリーも、よく勝負しました。これだけの強打者ですから、92年の明徳義塾-星稜で、星稜の松井(秀喜)選手が5打席敬遠された試合も頭をよぎりました。もし勝負していれば、松井選手だって本塁打記録を作っていたかも知れない、という思いも浮かびました」と振り返った。
そして「『甲子園は-』の実況は、清原選手の記録とともに語り継いでいただきました。その記録も塗り替えられたわけですから、今度は中村選手を例える言葉が、ホームラン打者の象徴として出てくるんでしょうね」と新たな時代の到来を予言した。
現在はフリーアナウンサー業の傍ら、趣味の野球観戦に没頭しているという。「来年夏は100回大会。また新しいスターが現れ、彼らを彩る新しい言葉が出てくるでしょう。楽しみですね」。昭和から平成へと時代は移っても、変わらぬ熱いまなざしを球児たちに送り続けている。(デイリースポーツ・中野裕美子)