【野球】広島・田中、マツダ57試合目で初お立ち台の怪
広島・田中広輔内野手(28)が26日・中日戦でマツダスタジアム57試合目で今季初のお立ち台に上がった。
打って守って走って、首位を快走するチームを支えている。プロ4年目の今季はキャリアハイの成績を収めそうだ。ここまで不動の「1番遊撃」として全試合フルイニング出場し、打率・294、5本塁打、51打点、29盗塁をマーク。打点、盗塁はすでに自己最多、リーグ全体で見ても、盗塁数1位、得点数も2位。トップバッターとして、申し分ない活躍を見せている。
それなのに本拠地でのお立ち台回数が25日までゼロだった。ある日の練習中、河内球団広報にそれを伝えると「本当に?知らなかったよ」とビックリ顔でサングラスを外した。お立ち台のヒーローは、テレビ局、球団営業担当、球団広報の3者で決定される仕組み。同広報は「本当にたまたまだと思うけどね」と目を丸くしながら、「後ろのバッターがよく打つからね」と謎を解くヒントをくれた。
今季、カープ打線はすさまじい。チーム打率、本塁打、得点はリーグ断トツ。1番・田中の後ろを打つ2番・菊池はパンチ力を秘め、打率・285、13本塁打、53打点。3番のポイントゲッター丸は打率・316、20本塁打、78打点。さらに鈴木も負傷離脱するまで打率・300、26本塁打、90打点と4番として堂々たる成績を残していた。その後ろを打つ5番松山、エルドレッド、新井、安部らも勝負強く、打ち出したらもう止まらない。チームの得点圏打率は脅威の3割超え。「ワッショイ!ワッショイ!」。得点時、ファンが歌う「宮島さん」のメロディーが耳から離れなくなるほどだ。
さらにお立ち台映像はスポーツニュースで扱われることが多く、決勝打を放った打者、白星を挙げた投手が選ばれるケースが多いという。チャンスメークが主な役割の1番田中にとっては、難易度も高いというわけだ。
田中本人はお立ち台に「こだわりはない」と言い、こう続けた。
「ぼくは周りの選手をお膳立てできる方が大事だと思いますし、ヒーローにならなくてもチームのために力になるということができている方がかっこいいなと思います」
粋なコメントにプライドがにじむ。まさに陰のヒーローだ。田中と言えばファンサービス精神旺盛でキャンプの練習後にサイン色紙にペンを走らせる姿もよく見た。河内広報は「広輔にお立ち台に立ってもらわないといけないね」と腕まくり。 8月26日・中日戦、田中は先制の満塁弾という自らの力でお立ち台に立った。(数字はすべて8月26日現在)(デイリースポーツ・杉原史恭)