【スポーツ】女子エース・宮原の“ぶっつけ本番”戦略 平昌五輪出場への勝算は…
フィギュアスケート女子のエースが苦しんでいる。全日本選手権3連覇中の宮原知子(19)=関大。昨年末から違和感を抱えていた左股関節が疲労骨折と判明し、年明けの昨季後半戦を欠場した。今季に入り、徐々に復帰を果たしていたが、左足首捻挫のため8月初旬のアイスショー出演を辞退。同月末に関大たかつきアイスアリーナで行われた公開練習には発熱等の体調不良で姿を見せなかった。
実戦復帰を予定していたフィンランディア杯(10月、フィンランド)もコーチらと相談し「無理しすぎて違うケガをまたしたら意味がない」と欠場を決定。思うように進まない、苦しい調整が続いてはいるが、グランプリ(GP)ファイナル(12月、名古屋)出場を懸けて戦うGPシリーズ第4戦・NHK杯(11月、大阪)での復帰が濃厚だ。
「不安はちょっとあるけど、滑り出したらまた元気になれるんじゃないかな」と前向きに話した彼女は、6日の都内での取材で「全日本に集中したい」と自らに言い聞かせるように語った。
平昌五輪女子の代表枠はわずか「2」。代表選考の1枠目は全日本選手権(12月20日から、東京)の優勝者が選ばれ、もう1枠は全日本の2、3位とGPファイナル上位2人、世界ランクやシーズンランクの上位者などから総合的に判断することが決まっている。
全日本選手権に照準を絞った“ぶっつけ本番”ともとれる宮原の戦略。当然リスクはあるが、五輪出場を目指す彼女にとってはある意味、最短ルートだとも思う。
GPシリーズで成績を残し、GPファイナルで表彰台などの結果が得られれば、当然そこでの評価は大きい。ただ、あくまで選考は全日本選手権優勝者が1番目。もう1枠も全日本選手権2位、3位が選ばれる可能性は大いにある。
現在、左足に負荷の掛かるトーループなどジャンプの練習はまだ十分にできておらず、調整不足は明らか。「追い込むと負担がいろんなところに出てくる」ため、昨季までより氷上で過ごす時間を大幅に減らし、状態を見極めながらの練習が続いている。決して状況が明るいとは言えないが、「GPシリーズは本番で感覚を取り戻す感じ」と割り切って臨み、最高の状態で迎えた全日本で“一発回答”というのも、悪い作戦ではないはずだ。
ソチ五輪後に浅田真央さんが休養を決めて以降、誰よりも多い練習量で自信をつけ、女子のエースとして小さな体でリンクに立ち続けてきた宮原。五輪は「いま一番目指したい場所」だ。「これまで頑張ってきたことをしっかり出せるように、諦めずにやりたい」。
5カ月後、誰が平昌五輪のリンクに立っているのかは誰にも分からない。宮原の他にも有力選手は多くいるし、彼女らの五輪への思いも並々ならぬ物を感じる。ただ記者が願うのは、選手全員が悔いなく戦い抜く姿が見られること。全力と全力でぶつかり合う、熱い年の瀬がやってくることを祈っている。(デイリースポーツ・國島紗希)