【野球】ロッテ・井口が持つ監督の資質
今季限りの現役引退を表明したロッテ・井口資仁内野手(42)が「ポスト伊東」の有力候補に浮上している。
福岡ダイエー(現ソフトバンク)を経て05年から08年までメジャー4球団でプレーし、帰国すると09年にロッテに入団した。
24日には引退試合が予定されているが、それに先立つ10日、ファンとのトークショーで注目の発言を行った。
気になる今後について、「自分としてはもっと野球の勉強をしたい。(将来の)夢がある。いずれそういう時期がくれば…」と話したのだ。
将来の夢。言うまでもなく監督である。ファンを前にしての前向きな発言である。
帰国した04年のオフに各球団間で「井口争奪戦」が起こった。最終的にロッテと巨人の2球団が残った。
ロッテの井口に対する評価は高く、当時の球団幹部は、「将来的には指導者になってもらいたい」と“監督手形”を切り、井口もこの熱意に応えた。ロッテが巨人に競り勝った背景にはこんな経緯があるという。
ロッテ関係者は、「この幹部はいまは(球団に)いないが、後を引き継いだフロントに申し送り事項として伝わっている」と話す。
8月13日に伊東監督が退団を明らかにすると、すぐに井口の名前が挙がったのも自然の流れだった。
現在、井口は出場選手登録を抹消されてファームで調整中だ。24日の引退試合に向けて、「最後まで全力でプレーして悔いのないようにしたい」という気持ちからだ。
井口のプロ野球人生はダイエーの主軸だった秋山幸二氏(現評論家)を追いかけることから始まった。
「あこがれの人でした。背中で語る。その背中を見てついていった。秋山さんになりたいと思った」としみじみと述懐する。
井口もまた、ロッテではその背中を若手に見せることでお手本になってきた。
いまはファームで若手とともに汗を流している。気になっているのが打撃向上を目指す2年目の平沢だ。
「黙々と練習をしていますよ。ウエートにも取り組んでいる」と話しながらも、「アドバイスはしていない。自分で考える時で、(アドバイスの)段階ではない」という。
井上に対しても、「かなり良くなった。(来季が)楽しみです」と期待している。
指導者には2つのタイプがある。
(1)選手の欠点はあえて指摘せずに長所を伸ばそうとする。(2)欠点が気になり、矯正に熱心になる。
どちらがいいとは一概には言えないが、井口は前者のタイプのようである。
メジャーでは4年間で2個のチャンピオンリングを手中にしたが、その一方でトレードを経験。さらには戦力外通告を受けた。
「4年間、毎日が試合の日々だった」と振り返り、こう話す。
「喜びを感じてやれば通用する」
あくまでも前向きな姿勢とともに、諦めることを知らない。
「井口監督」を見たい。こう思うのは記者だけではあるまい。