【サッカー】浦和、再建への一歩となった、全員でもぎ取った勝利
J1浦和は21日に天皇杯4回戦で、鹿島と対戦。2-4で敗れた。2点を先制されて一時は同点に追いついた。3点目を狙う攻防で勝ち越しを許しての敗戦。「3点目」がどちらかに入るかで、勝者はどちらに転んでも分からない展開だった。
相手はJリーグで2位に勝ち点6差をつけて首位を独走する鹿島。「基本的に自分たちがボールを動かし、ゲームを進めていたが、失点の仕方が悪い」(遠藤)と言うように、課題はまだあった。だが、一時の低迷機から脱出した姿は確実に見せた。
転機は、13日に行われたACL準々決勝、川崎との第2戦(埼玉スタジアム)に見られた。第1戦を1-3で敗れて不利な上に、前半に先制を許した。直後に追いつくと、後半は相手の退場で数的優位の中、3点を奪って逆転で準決勝進出を決めた。
「全員でもぎ取った勝利」。試合後、DF槙野は振り返った。
その前日、12日の朝のことだ。通勤時間帯に、浦和、北浦和、浦和美園、南越谷の各駅とその周辺に、淵田敬三社長を含むクラブスタッフ約30人、サポーター有志約40人が観戦を呼びかけるチラシを配布した。
そして、浦和駅東口ロータリーには故障で欠場するMF宇賀神、同北口には累積警告で出場停止のFW武藤雄樹が、雨の中、声を張り上げた。
武藤「出場停止で試合には出られないんですが、だからこそ、こうしたところで少しでもチームやクラブの力になりたいと思って参加させてもらいました」
宇賀神「皆さんの生の声が聞けるというのは自分の力になるので、参加させてもらいました。通勤時の忙しい時間帯だったんですけど、ちゃんと一人一人の目を見て配ったので、あらためてレッズのパワーを知ることができました」
それぞれ、そうコメントした。
宇賀神は「皆さん、最高の雰囲気をスタジアムで作ってくださると信じています」と話した。当日は今季平日の公式戦最多の2万6785人の観客が後押しした。武藤は「僕は出場停止で出られませんけど、チームメートがその期待に応えてくれると思います」と話した。集結したサポーターに勝利を届けた。
“全員の勝利”の意味を、槙野は説明する。「出られない選手もチラシを配っていた。フロントスタッフも配っていた。平日にもかかわらず、ファンも来てくれた。グラウンド外でみんながやってくれた。あとはピッチで結果を残すだけだった。スタッフ、サポーターと選手、3つが重なった」。
三位一体になってつかんだ1勝。クラブとしての原点かもしれない。まだ本物ではない。だが、再建への道を一歩ずつ進んでいる。(デイリースポーツ・鈴木創太)