【競馬】個性派ジョッキーの今後に注目!WASJに初出場した中野省吾騎手
8月26、27日に札幌で行われた今年のワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)に初出場した中野省吾騎手(25)=船橋競馬・渡辺薫厩舎。“南関東の天才”と評される25歳の若武者はどんなジョッキーなのか-。前日に行われたレセプションパーティーに、レース当日。個性が存分に伝わる3日間だった。
WASJ出場権を懸けたスーパージョッキーズトライアルで4戦3勝、2着1回のパーフェクト連対。3勝が5、5、4番人気なら、2着も7番人気と、どれも伏兵馬だったから驚き。突出した成績で最年少優勝を果たした。昨年は南関東リーディング4位の159勝を挙げ、15年の82勝から大躍進した。
なぜ、勝ち鞍が伸びたのか。中野は「自分の能力以上に、メディアが取り上げてくれました。そのおかげでいい馬に乗せてもらえるようになりました」と謙虚に話す。騎乗数や、馬の質がアップしたことが自信につながっている。
「いっぱい勝つことによって、乗り方が崩れても直せるようになりました。引き出しがたくさん増えたから、迷うことがない。心の切り替えが大事ですからね。今の僕は完璧につかんでいます」。その大胆さが騎乗スタイルにも表れている。
ライバルたちに向けた先制パンチとでもいおうか。WASJ前日に行われたレセプションパーティー。ボディーガード?と思わせるような屈強な外国人と一緒に会場入りした姿はインパクト大。周囲の視線を一身に浴びた。「ガーナ出身のケンちゃんです。来年、自分はイギリス遠征を考えているので、海外のジョッキーからも情報を得たい。通訳をしてもらおうと思って」と説明する中野。
終始ニコニコしていて、ハキハキとした物言いが印象的だ。「楽しく乗るといい成績が出る。僕がダメな成績のときは、つまらないんだな…と思ってください」。ポジティブな性格がレースにも表れている。JRA、海外のトップジョッキーが集まるなか、気後れする様子はない。「10人で一番経験値が少ないと思うけど、今はチャレンジャーではなく、同じ立ち位置にいる。表彰台の真ん中を目指します」。自信に満ちた表情と前向きな言葉に“中野ワールド”を感じさせた。
札幌競馬場の初見参となった土曜3Rで落馬して競走中止。ホロ苦いスタートとなったが、WASJ第1戦で鼻差の2着。続く第2戦が11着に敗れ、4位で初日を折り返した。2日目は第3戦が10着、第4戦は11番人気馬を5着に粘らせる健闘を見せたが、最終結果は7位。「力のある馬たちなのに僕が走らせられなかった。この2日間、柔軟さが足りなかったです」と肩を落とした。WASJシリーズや、ネロに騎乗したキーンランドC(8着)を含め、15鞍に騎乗。2回の2着が最高で、JRA初勝利はならなかった。
もっとやれた。それが本音だろう。ティーラウレアで10着に敗れたWASJ第3戦のレース後の言葉に表れている。「“前走のようなレースを”という指示でした。言われた通りに自由度の低いレースをしてしまったぶん、この結果になりました」。指示を守った騎乗だったが、思ったようにレースを運べていれば結果は違った。そう読み取ることができる。“ビッグマウス”と勘違いされても構わない。こういった意地こそ、ジョッキーには必要不可欠なものだ。
自身のツイッターでは飾らない思いを表現している。格言として「女がいたらとりあえず口説け。それがマナーだし、勉強になる」と記し、ある日は「先に行ってくれの指示が僕の騎乗を壊します。パートナーとの意思の疎通は取れるのだから任せてほしい」と思いをつぶやいている。“天才”かは分からないが、個性的なジョッキーだ。彼ならまた、WASJ出場の機会をつかむだろう。その時は南関東No.1として、満足できなかった今年の借りを返すに違いない。(デイリースポーツ・井上達也)