【野球】最下位ヤクルトの期待の星 寺島成輝が冷静と情熱のあいだで輝く
球団ワースト敗戦記録を更新し、最下位に沈んだヤクルトだが、来季へ明るい兆しも見えている。高卒ルーキーの寺島成輝投手(19)が1軍マウンドを経験。初々しさよりも堂々とした表情が印象的だった。
9月30日・中日戦(神宮)のマウンドに背番号18がいた。ゆっくり、丁寧に打者に対峙(たいじ)する。3回0/3を5安打5失点とホロ苦デビューとなったが、高卒1年目とは思えないような落ち着いた投球。「バッターがこういう感じと分かったので、次に生かせる」と確かな手応えをつかんだ。
苦悩に直面した1年だった。1軍春季キャンプ中に左内転筋筋膜炎を、さらに4月末には2軍戦での初登板直後、左肘痛を発症した。左腕は「けがで長期的に休むことは今までなかったです。投げたい気持ちが強くてイライラすることもありました」。焦る思いもあったが、気持ちを切り替えることに専念。2軍戦では6試合で0勝1敗、防御率2・37の成績を残し、1軍登板にこぎつけた。
プロ初登板初先発を見守った母・浩江さんは「テレビで見ようかと言っていたんですけど、この日はもう2度とないので。ずっとケガをしていて、今年は期待していなかったんですけど、投げられるようになって良かった」と胸をなで下ろしながら、息子の勇姿を見届けた。
東京のど真ん中に大阪の風が吹いた。入場曲に選んだのは関ジャニ∞の「TAKOYAKI in my heart」。関西を愛する寺島らしい選曲だった。「洋楽もかっこいいし、どっちにしよかな」とマウンドとは違う、あどけない表情に高卒らしさを感じさせた。
一方で入寮時、今年の漢字のテーマを聞かれ「冷」を挙げていたことを思い出す。「初めてのことで熱くなってしまうけど、冷静にやっていきたい」。ドラ1入団でも浮かれず、ケガを抱えても屈しなかった。冷静に、熱くならず-。その思いが投球にも表れていたように思う。(デイリースポーツ・疋田有佳里)