【芸能】エンケンの原点となった“あの曲”とは~遠藤賢司さんとスーダラ節と小林旭
日本のフォーク&ロックの礎を築いたレジェンドの1人で“エンケン”の愛称で知られたシンガー・ソングライターの遠藤賢司さんが10月25日、70歳で亡くなった。訃報を受け、2013年5月、宮藤官九郎監督の映画「中学生円山」に俳優として出演した際の単独インタビューから、音楽の原点となった曲を改めてご紹介したい。
エンケンは熱く語った。「クレージーキャッツの『スーダラ節』がはやっていた中学3年の時、クラスで先生のために何かを捧げる“謝恩会”があったんです。僕はおとなしい生徒だったんだけど、教室の後ろにあったほうきを持ち、ギターを弾くマネをして歌いながら走り回ったら大受けしてね。翌朝の職員会議で『遠藤はおかしくなった』と問題になったって、後で言われましたけど(笑)」
“ほうきギター”を持って植木等になりきること。それが音楽表現の原体験だった。
「スーダラ節に対して自分の中で『これだ!』と興奮するものがあったんでしょうね。なぜ、ギターも弾けないのに、ああやって走り出したのか、今につながるところがあるから不思議だと思います。その当時はまさか将来、自分で曲を作ってギターを弾いて歌っているなんて全く考えてもみなかったですけどね」
1969年のデビューからジャンルにとらわれず、“言音一致の純音楽”を掲げ、商業ベースに乗らずとも世代を超えたファンに支持されてきた。役者として自身の監督作に起用した宮藤もその1人。今年6月29日、結果的に最後の(有料の)ソロライブとなった渋谷クアトロ公演では、入口に宮藤から贈られた大きな花が飾られていた。この4年前のインタビューでは「スーダラ節」に続く音楽遍歴も語られた。
ボブ・ディラン、ニール・ヤング、レッド・ツェッペリン、フー、ドアーズ、クラフトワーク、セックス・ピストルズ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンなどと同列に、エンケンは小林旭にリスペクトをささげた。
「小林旭さんの『さすらい』は名曲ですよ。夜がまた来る、思い出つれて…なんて詞がすごいです。俺の中で『こいつに負けたくない』っていうのがあって、年上の旭さんに“こいつ”なんて失礼ですけど、その“負けたくない”が俺の中で充満して音や言葉になって出てくるんです」
「スーダラ節」や小林旭の「さすらい」…。大衆に愛された「歌」を少年時代に血肉としたことで、エンケンの“純音楽”は熟成されたのだと思った。(デイリースポーツ・北村泰介)