【野球】近い将来、阪神の遊撃を守る男 植田海に高まる期待

 個人的に期待してやまない選手がいる。阪神の植田海内野手(21)だ。コラムだから、あえて私情を入れていく。近い将来、必ずレギュラーになる選手だと思っている。

 1年前、阪神担当になりたての私が、主に2軍を担当していたときだった。遊撃を守る選手のスピード感あふれるプレーに目を奪われた。まだ選手について勉強したてだった私は、すぐに名前は分からなかった。背番号「62」、「UEDA」。すぐに持っていた選手名鑑を見て略歴を追った。当時高卒2年目。ネットなどで調べると、多くのページで守備、走塁が売りだと書かれていた。

 捕ってからの速さ、送球の正確さ。手首が強く、スナップスローもトップレベル。速くて強い球を投げられる。走ってもチームトップレベル。2軍のトレーナーらも植田の身体能力に感嘆することは多い。実際に筋肉を触らせてもらうと、腕、背中、足、全てが柔らかい。今では体も大きくなっているにも関わらず、だ。全身がバネでできているような感覚だった。

 今季もシーズン途中から1軍に上がり、主に代走、守備固め要因として起用された。好走塁、初盗塁。自身の求められる長所を遺憾なく発揮していた。そんな中、成長を感じたのはこれまでの課題であった「打撃」。両打ち転向後2年目で、少ない打席数の中で結果を残した。

 プロ初安打を含む5安打。「やっぱ打てなきゃダメですね」と漏らしてきた男が、打棒を開花させつつある。新しく取り組んだ左打席では、トップを作ってボールを捉えるまでの瞬間、わずかに体が浮いていた。インパクト時に力がボールに伝わり切らない癖があった。平野打撃コーチと沈み込むようにティー打撃を繰り返す日々。植田自身も手応えを感じ「今はいろいろ意識しながらできている」とうなずく。努力が着実に実り始めている。

 CSでは代打で登場してDeNA・ウィーランドから右翼やや右へ打球を運んだ。内角球をコンパクトなスイングで引っ張り二塁打。これが初めて放った長打だった。一線級の投手が投じた内角の難しい球を引っ張る。「1球目の真ん中低めにきた球を見て、あれだけ角度があったら、打つことは難しい。早いカウントから打ちにいこうと思った」。天性の勝負勘に加え、取り組んできた打撃が自然に出せた打席だった。

 金本監督も「成長が早い」と評価する21歳。技術だけでなく、意識も変わっている。「3割を打ちたい。出塁にもこだわりたい」。11月のアジア・ウインターリーグへの意気込みだ。これまでは盗塁などの走塁面、もしくは守備面での抱負を語ることの多かった植田だが、攻撃面での抱負を口にした。1軍を経験して、大舞台の中で「本当の野球」を経験した。そのことでより一層、主力にならなければならないという自覚が芽生えたのだろう。

 レギュラーになるために-。必要である打撃力を、懸命に磨いている。2軍にいる時は、オフになれば室内に。1軍に帯同し始めてからは、試合前練習の何時間も前から特打に励んでいた。それは甲子園での試合だけでなく、遠征地でも。単純に考えれば、スイッチヒッターは他の選手よりも倍以上の練習が必要。元々右打ちだった植田は左打ちに取り組み始めて、ボールを押し込む動作に必要な左リストの方が太くなっている。そのことについては「まあまあ」と照れ笑いを浮かべるが、左リストには血のにじむ努力が詰まっている。

 走攻守にわたって、高いレベルを追い求める若虎。鳥谷に次ぐ、遊撃のポジションを確固たるものにする日もそう遠くはないはずだ。そんな植田に期待を寄せる金本監督の目によって、これからさらに多くのチャンスが与えられるに違いない。その絶好の好機をつかめるだけのポテンシャルは備わっていると信じている。(デイリースポーツ・山本真吾)

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