【野球】阪神・森越、中日時代の先輩・堂上剛への思いを胸に来季へ「やるしかない」
金本タイガースに欠かせないムードメーカーは、今年29歳を迎えた苦労人。阪神・森越祐人内野手には、プロ野球選手として頑張らなければいけない理由がある。一度は折れそうになった心を、奮い立たせてくれた尊敬する先輩の存在-。チームを盛り上げる明るい笑顔の奥には、秘めたる熱い思いがあった。
運命の出会いは中日の2軍本拠地・ナゴヤ球場の選手ロッカー。森越の真正面に陣どっていたのが「本当に熱い方でした」という堂上剛裕氏だった。意気投合した2人は腹を割って互いの悩みを打ち明け合い、励まし合いながら1軍の舞台を目指した。「野球の話、プライベートの話もいろいろしました」。共に過ごした日々は一生忘れられない、かけがえのない時間だった。
そんな先輩と森越は14年10月1日、同じ日に中日から戦力外通告を受けた。その後に先輩は巨人と育成選手契約を結び、森越は12球団合同トライアウトを受けた後に阪神へ入団。もう一度チャンスをつかみ、プロ選手として新たな道を歩み始めた2人。先に結果を出したのは堂上だった。
翌年の春季キャンプ中に支配下登録され、5月12日に1軍昇格。同日の広島戦で、現米大リーグ・ドジャースの前田健太から2安打1打点を記録。初めてお立ち台に上がり、格別な美酒を味わった。
森越は2軍で地道に鍛錬を積み、17年シーズンは主に二塁の守備固めとしてプロ最多29試合に出場。試合前の円陣では輪の中心で声を張り上げ、プレー以外でもチームに貢献。CSファーストS敗退後は秋季練習に参加し、来季へ向けた準備を進めていたが…。思いもよらぬニュースは10月28日、突然だった。
「巨人・堂上剛裕、戦力外通告を受ける」
翌日、中日時代の同僚で尊敬する先輩は、現役引退を表明した。「ビックリしましたよ…。でも、2回目ということで決断されたのかもしれません。僕も一度経験しているので、お気持ちは分かるような気がします。家族もいますしね」。やりきれない、どこか寂しい気持ちが心の中を支配する。だが、森越はすぐに前を向いた。
「1年でも長くできるように頑張ります」
現在は、高知・安芸で行われている秋季キャンプで鍛錬の日々を送る。志半ばでユニホームを脱いだ堂上の分まで、頑張らなければいけない。「もう、自分はやるしかないので」。いつも笑顔で、明るく前向きに白球を追っていた大先輩のように、野球人生を歩む。(デイリースポーツ・中野雄太)