【野球】稲葉監督、日韓戦の山崎投入の狙いは“ヤスアキジャンプ”
野球の醍醐味(だいごみ)が凝縮された一戦だった。16日に行われた「ENEOS アジアプロ野球チャンピオンシップ2017」の日韓戦。タイブレークの延長戦までもつれ込んだ激闘は、十回に日本代表が3点ビハインドをはね返し、逆転サヨナラ勝ち。最終的に23時半を過ぎても球場に残っていた日本のファンが、歓喜に酔いしれる展開となった。
初陣の稲葉篤紀監督(45)は、冷静なベンチワークで劣勢をはね返した。試合後、してやったりの表情で振り返ったのは1点ビハインドの九回、守護神・山崎康(DeNA)を投入した場面。最少得点差で最終回の攻撃に移るためには当然の策と言えるかもしれないが、ある狙いも隠されていた。
「山崎選手が出ると、ファンがジャンプをしてくれるでしょう。劣勢の展開で、球場の空気が変わってくれないかなと思った。自分も(現役時代に)“稲葉ジャンプ”で流れを変えてもらっていたので。ファンの皆さんの力もいただいた」
現役時代は打席に立つたび、ファンが曲に合わせて飛び跳ねる「稲葉ジャンプ」で後押しを受けた。日本ハムの本拠地、札幌ドームでは球場全体が揺れるほど盛り上がり、重圧を受けた相手に対して優位に立つことができた。だからこそ“ヤスアキジャンプ”の効果に期待し、迷いなく山崎康を送り込んだ。
狙い通り、山崎康はテンポ良く三者凡退に抑え、反撃ムードを高めた。するとその裏、相手投手陣が四球を連発し、押し出しで同点。延長戦でのドラマを呼び込んだ。サヨナラ打を放った田村(ロッテ)は「九回あたりから、ベンチからも負けたくないという気持ちがすごく出ていた」と言えば、山川(西武)も「意識的に盛り上げようとは思わなかったが、自然と声が出ました」と、振り返った。
「選手に助けていただきました。初めての采配で、交代も含めて反省点もいっぱいあった」。激闘を終え、こう謙虚に語った稲葉監督。無形の力も巻き込んだ執念の采配が、最後の最後で実を結んだ。(デイリースポーツ・佐藤啓)