【芸能】タカトシ「無人駅で飲食店」人気の理由を探る 命がけ、終わり読めない本気ロケ
お笑いコンビ、タカアンドトシがMCを務めるテレビ朝日のバラエティー「帰れまサンデー・見っけ隊」(日曜、後4・30。関東ローカル)が日曜夕方を席巻している。「与えられた課題をクリアできるまで帰れない!」というシンプルかつ過酷なチャレンジ番組は視聴率を二桁に乗せ、同時間帯のトップ戦線を走る。人気を支える企画の一つ「無人駅で飲食店を見つける旅」の舞台裏や好調の理由を同局・古瀬麻衣子プロデューサーに聞いた。
番組は2015年1月に終了したタカトシMCの人気番組「もしものシミュレーションバラエティー お試しかっ!」の一企画「帰れま10」のリニューアル版として放送。大人気企画は無人駅があるローカル線を舞台に、サイコロの出た目の数だけ駅を進み、無人駅に下車する。駅付近の飲食店を歩いて探すシンプルな旅だが、山中の駅に降りてしまうと、何キロも山道を歩くハメに。タカトシとゲストは出目に応じて、下車と長い散歩を繰り返しながらゴールを目指す。
苦しい表情をしながらタカトシが「毎回、足腰がぶっ壊れる気がする」と語る恐怖のロケ。古瀬氏も「自分が経験したロケの中で一番、終わりが読めない」と祈るような思いで撮影をしている。
長い距離を歩いて見つけた店が閉まっていたり、撮影許可が下りないことも多い。「お願いしてお店を開けてもらえなかったら、このあと10キロ歩かないといけないかもしれない…。交渉して『撮影OKとなるように』と心の中で思いながら、駄目なときもある」。出演者を無事、東京に帰すことができるのか、恐怖との戦いだ。
スタッフは最大1カ月かけてタカトシが挑む路線を準備する。一日で終われるような無人駅があるローカル線を調べ、鐵道会社と交渉。同時に周辺を「Googleマップ」でリサーチして、大方の地図を描いてからロケハンに出向く。調査段階ではスタッフは車で移動しながら、全駅に下車。地元民に飲食店の場所を聞くなどシミュレーションを行い、状況を把握していく。
事前につかんだ情報は、企画が実現可能か想定するためのもの。出演者には教えない。
「『この駅に降りたら面白いお店があるのに』と思っても、地元の方が勧めず逆方向に行くことも。ロケが全部終わってから、『あのとき右に行かないで左に行ったら100メートル先にありました』とか。『言えよ!』と言われますが、言わないです」
サイコロを操作したい誘惑に負けず、運に身を任せている。タカトシの「俺らも本気でやってるから、お前らも嘘ついたり絶対するなよ」という姿勢から、「彼らに何度も本気でやってもらうためには、こちらも悪い操作は絶対に(出来ない)」とガチンコ勝負だ。逆に、「6・6・6と目が出ちゃえば、ぽぽぽんと終わる。『これで面白くなるの?俺ら楽ちんに帰っちゃうよ?』と、楽だったときもあります。それを止めることはできない。運でやってて良いのかという感じですが…」と計算できない怖さが常につきまとう。
「無人駅」企画は田舎の飲食店事情を知りたいなどの思いから逆算して生まれた。「帰れま10」時代から一緒のスタッフという同氏は、「タカトシは過酷なことをしてなんぼという記憶が残っている。苦しいことを共にしてこそチームだよねと。食べ物を紹介したい。旅も乗せたい。でも、のんびり旅番組ではタカトシには合わない。過酷さを乗せつつ飲食店。逆算すると無人駅」にたどり着いた。
今年3月、日曜午前の30分番組時代に初めて「無人駅」を放送。面白さを実感した。4月から夕方の1時間番組に変わり本格的に「無人駅」を開始した。
4月23日放送の千葉・いすみ鉄道では、元SMAPの中居正広(45)がゲスト出演し、10・2%を記録。8月6日の福島・会津鉄道では企画最高13・1%を達成。スポーツなどを放送した裏番組を圧倒し高い支持を得る。
ロケでは出演者はもちろん、マネジャー、スタイリストら全スタッフが歩く。「私らが自転車に乗っていたら怒ると思う。だから全力で一緒に歩く。みんな歩いているから、やろうと。それがないと最後まで行くのがしんどい時がある」。ロケ成立の裏には苦しみの共有も切り離せない。
古瀬氏は「時間帯の妙と『楽をさせないぞ』というスタッフも命がけなところが、リピートしてみようと思って下さる由縁になっている気がします」と好調の要因を分析する。
19日は長野県泰阜村を舞台に、3人乗り自転車に乗って、村の飲食店5軒を探す旅を放送。20日はゴールデン特番「無人駅で飲食店を見っけ隊&Qさま!!大人の語彙力テスト 豪華2本立て3時間SP」(後7・00)で、静岡県・大井川鐵道を舞台に企画最多無人駅25駅の難関に挑む。
「全国に放送されたら全国の路線に行きやすくなる」と特番はアピールの機会だ。今後も秋田の路線など挑戦したい無人駅はたくさんある。ゴールデンレギュラー昇格への思いには、「タカアンドトシの過酷な第2章が出来たら、みんな、うれしいだろうとは思う。『俺らも、どんどんおじいちゃんになるんだぞ!』といつも言われるので、頑張ってお付き合いしながら彼らの足腰が続く限りはやりたい」。“帰れまチーム”の過酷な旅は、妥協なく続いていく。(デイリースポーツ・上野明彦) ※数字は関東地区、ビデオリサーチ調べ