【野球】阪神・石崎が“剛球”で未来切り開く 155キロ、ストレートの秘密
最速155キロの直球に自信が加われば、世界でも十分通用する。19日、東京ドームで行われた「ENEOS アジアプロ野球チャンピオンシップ2017」の決勝・韓国戦。八回に登板した阪神・石崎剛投手(27)は、1回を無安打無失点に抑えた。威力抜群の真っすぐは、国際大会の舞台でも相手を寄せ付けない。1年前、オリックス・平井正史2軍投手コーチから伝授された“ストレートの心得”が、忘れかけていた自信を呼び覚ました。
「『台湾に行ってくれ』と言われた時は正直、喜びを感じました。まだ自分にはチャンスがあるんだ、と。前向きに考えるしかなかったし、行かせてもらって良かったですね」
10試合に登板し、防御率1・69と頭角を現した昨シーズン。しかし、右肘痛(インピンジメント症候群)を発症して後半戦を棒に振ってしまった。そんな右腕に、球団は台湾ウインター・リーグ派遣を決意。日本選抜チームでは26歳の最年長。覚悟を決めて臨んだ海外武者修行で、飛躍のきっかけをつかんだ。
守護神として10試合に登板し、防御率0・00。10回1/3を投げて16奪三振、1点も奪われずにリーグ最多4セーブを挙げた。メキメキと成長を続ける右腕の隣にいたのが、同チームに帯同していた平井コーチ。「直球に対する考え方、使い方を持っている方でした」と見て、聞いて学んだ。
「オリックスでクローザーをやられていた時の話をよく聞きました。今でも、えげつない遠投をしていましたしね。教えていただいた練習方法は、台湾でも実践していました」
平井コーチは、宇和島東から93年度ドラフト1位でオリックスに入団。95年には新人王、最優秀救援投手と最高勝率のタイトルも獲得。同年の日本一に貢献し、中日に移籍後も球界を代表するリリーバーとして活躍した。武器は常時150キロ超の真っすぐに、落差の大きいフォーク。「球が速いのは共通している部分だと思います。当時は、遠投や中投の仕方を勉強させてもらいましたね」。教えは現在も生きている。
体の軸を意識しながら遠くへ、強い球を投げる。反復することで投球フォームは安定し、肩力もつく。平井コーチから伝えられた極意は、飛躍の道へとつながっていた。今季は8月に1軍昇格を果たし、26試合の登板で防御率1・17。自信満々に投げ込む直球は分かっていても打てない、藤川球児の“火の玉ストレート”をほうふつとさせるものだった。
侍ジャパンには阪神でただ一人選出され、大舞台を経験。稲葉ジャパンのセットアッパーとして、アジア王者に導いた。「楽しかったですね。いろいろ学べましたし、収穫はたくさんあります」。新球ツーシームにも手応えを感じたが、一番の武器は真っすぐ。平井コーチ直伝の“剛球”が、未来を切り開く。
(デイリースポーツ・中野雄太)