【サッカー】悲願初Vの川崎 中村と小林が抱き合って流した涙の裏側は…

 2日に行われたサッカーのJ1最終節で、逆転優勝を果たした川崎。悲願の初タイトルを達成した瞬間、等々力競技場は歓喜の空気に包まれた。地面に突っ伏していたチームの大黒柱・中村憲剛と、何人ものチームメートに乗られながら天を仰いだ主将・小林悠。2人はその後、ピッチで固く抱き合って再び歓喜の涙を流した。「オレと悠にしかない関係性もあるからね」と中村が明かす涙の裏側には、互いに苦楽を共に歩いた歴史があった。

 練習前のウオーミングアップ。フリーで2人組を作ってパス交換などを行う際、中村と小林がペアになることが多い。「いつからだったかな。それまではずっとジュニーニョ(11年まで在籍)と組んでたんですけど、ジュニが移籍して。どうしようかと思ったら、憲剛さんが余ってて。『友達いないんだったらやりますか』って声かけたら『お前が余るだろうから待っててやったんだよ』って。そんな感じでスタートしたと思います」。年齢は中村が7歳上だが、共に大卒生え抜き。おのずと会話も増えた。

 小林は今季から、中村から引き継ぐ形で主将に就任した。当初、主将としての振るまいや行動、リーダーシップなどを考えすぎて、自らのプレーも精彩を欠いたほど。「キャプテンとしての考え方など、知っていたのが憲剛さんだった。僕はあんまり相談というつもりはなくて、とにかく聞いてもらいたかった。でも、結局一番相談しましたね」。実は主将に就任した際に、ひそかに思っていたことがあった。「僕が主将になったら、案外簡単にタイトル取れるんじゃないかなって」。

 だが、それは11月に打ち砕かれた。「正直、自信があった」と振り返るルヴァン杯・決勝。強い緊張状態が原因なのか、立ち上がりのミスでいきなり失点。タイトルは遠のいた。「自分は何もできなくて。もしかしたら『このクラブは呪(のろ)われているのか』とまで思った。試合後にうずくまっているチームメートを見ていると・・・。キャプテンの重圧というか責任というか。これを何年も憲剛さんは背負っていたんだと思った」。先輩の偉大さをあらためて感じる1年となった。

 一方の中村は、そんな小林を、プロ入り直後から気にかけていた。「アイツがフロンターレに入ってきた時から知っているし、能力はあるのにケガで苦しんだり。練習とかで成長していく過程も見てきた。今季もいろいろ話をしていたし、それが得点王にもなったわけだしね。オレと悠にしかない関係もあるんだよ」。

 初優勝を決めた直後のピッチ。次々とチームメートと抱き合いながら、2人は互いを探した。「それまでもすごく泣いていたんですけど、憲剛さんと目が合ったらもう、お互いくしゃくしゃで・・・」と小林が振り返れば、中村も「映像で見て、ひどい顔しているなって思いました。カメラマンが僕らの周りをくるくる回っていたので、僕らも意味が分からず回ってしまいましたけど」。

 友情や師弟関係とは少し違う。いわば戦友という関係だろうか。さまざまな思いの詰まった2人のうれし涙は、美しかった。(デイリースポーツ・松落大樹)

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