【アメフット】林大希の人生を変えた『運命の出会い』 ミルズ杯獲得の日大1年生QB
アメリカンフットボールの第72回甲子園ボウルが17日、甲子園球場で行われた。東日本代表の日大(関東)が23-17で西日本代表の関学大(関西2位)を破り、27年ぶり21回目の優勝。関東勢としても2006年の法大以来11年ぶりの頂点に立ち、甲子園は日大の赤い歓喜の輪に包まれた。
下馬評が高かったのは関学大だったが、第1Q早々に先制されながら重圧を物ともせず逆転。相手の猛追も第4Qのインターセプトでばっさりと断ち切った。その戦いぶりには攻撃陣、守備陣ともスタメンに1年生が3人ずついる若さと勢いを感じさせた。
象徴は、いずれも1年生として史上初となる大会最優秀選手と年間最優秀選手(ミルズ杯)の2冠を獲得したQB林大希(1年、大正高)だ。順風満帆に見える18歳の競技人生は、実は紆余(うよ)曲折が多かった。
大阪出身。指導者だった父の影響で小学1年からアメリカンフットボールを始め、強豪の関大第一高にスポーツ推薦で進学。しかし「勉強がついていけなかった」と進級できず2年で府立の大正高へ。関大第一をやめる時には「ショックが大きくてフットボールを続けないという選択肢もあった」と言う。
そこで「やらなくてもいいからフットボール部のある学校へ行った方がいい」と強く進めてくれたのは母だった。同校では競技を継続。練習試合を含めて一度も勝てない弱いチームだったが、仲間と充実した毎日ではあった。
高校で現役を終えるつもりだった昨年1月、運命の出会いが人生を変えた。大阪選抜チームでプレーしていた姿を見た日大の長谷川昌泳コーチから「うちじゃなくてもいいから大学でフットボールを続けるべきだ」と言葉をかけられたのだ。才能を認めてもらえた喜びと「自分を必要としてもらっている」という思いが、日大入学を決意させた。
ちょうど1年前の今頃は「甲子園(ボウル)なんてすごく遠く感じていた」。まして子供の頃から憧れた大舞台で背番号10をつけ、関学大との宿命の対決を制する立役者になるとは想像もしていなかった。
もし、高校時代に関学高と対戦していたら?という報道陣のいじわるな質問に、林大は「200点は取られたでしょうね」と笑って答えた。今回の栄冠も「(上級生やスタッフが)びっくりするくらい気にかけてくれた。周りの支えがあるからやれた」と言う。常に謙虚で感謝の気持ちを忘れないのは、歩んできた道のりがあるからだろう。そして、その気持ちがある限り、未来はさらに大きく広がっていく気がする。(デイリースポーツ・船曳陽子)