【野球】センバツ21世紀枠出場の膳所、異色のデータ野球支える2人の野球部員
創立120年の歴史を誇る全国屈指の進学校・膳所=ぜぜ=(滋賀)が、21世紀枠でセンバツに出場することが決まった。甲子園出場は1978年夏以来40年ぶり。センバツは59年以来59年ぶりと、久々に聖地へ帰ってくることになった。
昨秋の滋賀大会は8強。準々決勝は、のちに近畿大会4強となる近江に1-3の惜敗だった。同校の特徴はデータ野球。上品充朗監督(48)が、高校野球界では異色のスタイルに力を入れるきっかけを作った。
2009年に母校の監督に就任。火、木曜は7時間授業と学業優先となるため、野球では苦しい日々が続いた。「普通に指導していても勝てないし、何かをやらないといけないと思った」。3年前。アスレチックスのビリー・ビーンGMが、セイバーメトリクスを用いてチームを強化する過程を描いた「マネー・ボール」を読み、データに興味を持った。
ここから大胆な守備位置をとるなど、これまでの概念にとらわれない野球スタイルに移行。これをさらに根拠づけるために昨年4月に、野球部専属のデータ班として部員を募集。野津風太くん、高見遥香さん(ともに1年生)が自ら希望して入部した。
2人は野球経験がない。部員として外野手登録しているが、普段はグラウンドに立つことはなく、データの収集、分析などに取り組む。
練習試合はもちろん、滋賀大会では1回戦から決勝まで相手打者のデータを収集。打球傾向はグラウンドを198分割した図で表し、試合前にパワーポイントで選手にプレゼンする。
このデータを元に、選手は試合で極端なポジションを取る。上品監督は「うちは技術面では能力が低い。ゴロでも横に振られるとポロッとする。それなら、最初から正面に飛ぶ確率が高い所を守ろうということ。うちは普通に左中間にレフトがいたり、二塁上を守ったりしていますから」。今後はプログラミングに興味がある野津くんが主体となり、滋賀大学のデータサイエンス学部と協力し、データベース化まで目指しているという。
打順の組み方にも明確な根拠がある。セイバーメトリクスを基に、打率より出塁率を重視する。4番・川村いつき内野手(3年)は昨秋の公式戦4試合で打率・000ながら、チームトップの9四球を選んでおり、出塁率が5割を超える。
塁に出る4番を生かすために、3番には長打を打てる平井崇博内野手(3年)、5番には勝負強い今井竜大外野手(3年)を並べ、得点できる確率を上げている。
主将の石川唯斗捕手(3年)は「データはありがたい。ポジショニングなどで本当に助けられています」と話せば、上品監督は「甲子園に行けたのは2人のおかげだと思う」と感謝する。今や2人は膳所には欠かせない戦力だ。
今後は野津くんと高見さんは、センバツ出場校のデータも徹底的に分析する。昨年は卒業生も含めて全国2位となる66人もの京大合格者を出した全国屈指の進学校が、強豪ぞろいの甲子園で、どのような野球を展開するのか注目だ。(デイリースポーツ・西岡誠)
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