【野球】「二塁鳥谷、三塁大山」に見えた星野魂
2005年以来、リーグ優勝から遠ざかっている阪神。しかし、もしかしたら今年は久しぶりに関西が熱狂に包まれるかも…と私は密かに期待している。
新たに右の大砲、ロサリオを獲得。想定通り4番に固定することができれば、攻撃力は確実に上がる。投手についても救援陣に安定感があるだけに、大崩れの試合になることは少ない。
といった当たり前の理由はここまでにしよう。ちょっと独断と偏見気味な個人的見解を書かせてもらう。
私が“ひょっとしたら…”と感じた瞬間は「二塁鳥谷、三塁大山」の構想を耳にしたときだ。これを聞いたとき、2003年に18年ぶりVをもたらした星野監督の顔を思い浮かべた。
今季、阪神の二塁、遊撃のポジションは誰が守るのか。大山を本当に二塁手として育てるのか。これがキャンプ前から注目されていたポイントの一つだった。
私は03年に担当記者として星野阪神を取材した。闘将であれば今の阪神内野陣をどう仕切るか。おそらく大山に三塁を任せ、鳥谷を二塁へ回すのではないだろうかと勝手に想像していた。星野監督の顔を思い浮かべた、というのはそういう理由だ。
03年の開幕スタメンを覚えている虎党は多いだろう。すべては勝つための布陣。その象徴が「一塁桧山」だったと、私は思っている。当時の外野は左翼金本、中堅赤星、右翼には若き4番浜中。しかし勝つためには桧山の打撃が必要だと判断したからこそ、外野への強いこだわりを持っていた桧山を説得し、一塁へ回した。「ファーストが嫌なら使わんだけや」と言った時の、闘将の厳しい目つきは今でも覚えている。その強引さに、文字通りチームは優勝へ向かって強く引っ張られたように思う。
今の阪神に大山、鳥谷の打力は欠かせない。大山が潜在能力を存分に発揮するには、慣れない二塁より三塁の方がいい。鳥谷であれば二塁をこなすこともできる。金本監督ら首脳陣はそう期待した。優勝するための、これがベストの布陣として首脳陣は決断した。
鳥谷は遊撃から三塁へ転向した昨季、ゴールデングラブ賞を獲得。そして今年は二塁へ。複雑な心境を抱いてもおかしくはないが…。宜野座キャンプでは「言われた限りはしっかり準備をするしかない」と、黙々と二塁守備練習に取り組んでいる。15日には早出特守もこなした。
ベテランをコンバートしてでもとにかく勝ちにいく。何が何でも「勝ちたいんや!」。闘将魂は今も金本監督ら教え子たちの心の中で生きている。(デイリースポーツ・岩田卓士)