【野球】勝って初めて伝統は作られる…阪神・掛布SEAが若虎に伝えたいこと

 勝って、初めて伝統は作られる。

 阪神タイガースは、今年で球団創設83周年。これまで積み上げてきた歴史は尊くもあり、重たいものでもあった。金本知憲監督が現役時代にMVPに輝いた2005年のリーグ優勝、4年連続の最下位を含む暗黒時代…。いいときもあれば、悪いときだってもちろんあった。

 その歴史をもっと濃いものにしてくれ。熱い思いを語るのは、掛布雅之SEA(62)だ。かつて掛布氏もまだ若虎だった頃に、“待った”をかけられたことがあった。その相手は小林繁氏。1979年にトレードで阪神に移籍してきた男が、開口一番に発した言葉に衝撃を受けた。

 「巨人には伝統があるけれど、阪神には伝統がない」

 当時すでに主力選手だった掛布氏。ミスタータイガースとも呼ばれ、阪神一筋でチームを引っ張ってきた男はこう振り返る。「僕はその時、すごく悔しかった。『何言ってんだ』と思って。『こいつに負けられるか』という気持ちでした」。生え抜き選手が、こんなことを言われたままでは終われない。

 虎一筋の4番打者と移籍組のエース。79年、阪神4位。それでも掛布氏は48本塁打をマークし、小林氏は22勝を挙げた。掛布氏は「小林さんに負けるわけにはいかないという、24歳の時の48本のホームランは小林繁さんが打たせてくれたホームランです」と回顧する。月日は流れ、両者とも現役引退。そして今になって、言葉の真意にたどり着いた。

 「80年の阪神にも歴史はありますけど、巨人のイベントというのはすごい数のチャンピオンフラッグがあるわけですよ。勝って、初めて伝統は作れるんだなと。小林さんが言いたかったのは、『掛布。これからお前が、阪神の伝統を作るような選手にならないといけない』というメッセージだったんだなって」

 巨人と阪神。通算で阪神は805勝1043敗と大きく負け越し、苦汁を飲んできた。3年目となる金本監督率いる超変革、1月24日には伝統の一戦で着用する限定ユニホームも発表された。掛布氏はかつての責務を思い返し、これからを担う後輩たちに熱いエールを送った。

 「今の若い選手たちも、ただただ長い歴史がある阪神だけではなくて、伝統ある阪神タイガースと言われるような野球を。金本監督中心に、今から作っていってほしい」-と。(デイリースポーツ・松井美里)

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