【野球】10年後の清宮のために封印した打撃練習
アリゾナ1次キャンプを終え、17日から沖縄2次キャンプに臨んでいる日本ハムのドラフト1位・清宮幸太郎内野手(18)=早実=。米国では右手母指基節骨骨挫傷の影響で、第2クールまで打撃練習を回避していた。それには2つの理由があり、一つ目は最も大事な患部の完全回復。そして、もう一つの理由とは-。
灼熱(しゃくねつ)の太陽の下、報道陣が清宮を囲んだ第2クール最終日の8日(日本時間9日)。打撃練習の再開時期を問われた時、意外な言葉が飛び出した。「打つか打たないかは、痛みどうこうの問題ではないので」。回避していた理由は一つではなかった。
新人合同自主トレ中に右手親指を痛めた。一度は打撃練習を開始したが、キャンプイン前に再び回避。以後、2月8日までバットを握ることはなかった。痛みを完全に取り除き、万全の状態に戻すことが第一の目的。だが、それ以上に栗山監督は「今やるべきことをやる」と伝えていた。
その一つが、野球人生を左右しかねないスローイングの矯正だった。まず、警笛を鳴らしたのは金子内野守備走塁コーチ。「あの投げ方だとキャンプ中に痛めてしまう」。テークバック時に肘を無理に後方へ引っ張っており、肩に負担がかかる担ぎ投げをしていた。
酷使すれば関節に炎症が起き、腱板(けんばん)損傷へと悪化する恐れもある。金子コーチは「上半身が強いから、そこに頼った投げ方をして、体重移動ができていない」と改善点を指摘。打撃練習を再開できる状態になっても、キャンプ初日から8日間はあえてバットを握らせなかった。痛みがなくなっても、相棒はファーストミットだった。
テークバックをコンパクトに修正する練習を反復。ノックでは遊撃や三塁に就き、捕球から送球までの一連の動作を繰り返した。矯正した投げ方を動きの中で実践し、自然と下半身主導の体重移動も体に染みついていく。栗山監督との“合言葉”も、守備に集中できた一つの要因だった。
「10年後に振り返った時、『1年目のキャンプの最初はこうやってよかった』と思えるようにやっていこう」
バットと距離を置いたことで、怪物はまた成長した。最終クール初日の21日にもフリー打撃を再開し、一気に実戦の打席へと進む見通し。目指すは13年の大谷翔平以来、球団高卒新人で5年ぶりとなる開幕スタメンだ。(デイリースポーツ・中野雄太)