【野球】阪神が死角なしの鯉に勝つためには…鯉キャンプ潜入で分析
「ストップ・ザ・鯉」を合言葉に各球団、シーズンを勝ち抜くためのキャンプが続く。阪神が広島の3連覇を阻み、13年ぶりの頂点に立つカギとは…。トラ番9年目、2015、16年は鯉番として、25年ぶりのリーグ優勝を見届けた経験から、広島キャンプに潜入して探ってみた。
スタンドからグラウンドを眺める。3カ所での打席練習に内外野のノック、走塁練習。その光景は「真っ赤」だった。赤色のユニホームを着た選手たちが、所狭しと常に動き回っている。練習に無駄がない。
数年前から金本監督が最も警戒する打者は菊池。仕上がりは上々のようだ。「練習から若い選手の必死さも感じる。俺たちも負けられない。相乗効果もあると思う」。連覇の土台を築いた石井、河田両コーチが抜けた。不安材料に挙げる声もあるが、名手が強調したのは選手の自覚だ。
「最初は練習量も多かったし、やらされている空間があったけど、それが浸透して。今はコーチが言う前にこうだろ、って選手同士で言う雰囲気。いい空間だな、と思う。一致団結とか、一丸という言葉を、身に染みて感じる部分がある」
連覇の自信。勝つための基準を知っているからこそ、練習濃度は濃く、選手同士の競争意識も激しくなる。投手も同様だ。ローテは既に5人確定。昨季6勝に終わったジョンソンは上積みが期待され、薮田、岡田、大瀬良、野村までは確定だ。
畝投手コーチにあえて、不安材料を聞く。「今の時点では正直、ないんよな。でも、プラス材料なら若い投手が出てきてくれたこと。特に2年目の選手よ。使えるイメージができた」。高橋昂、アドゥワ、長井に4年目の藤井皓。次々に楽しみなんだと名前を挙げる。
日本一の練習をしている自信がある。その上で、連覇を遂げた確信がある。王者の風格か。黙々と続く練習にも深みを感じた。戦力は充実。チームとして精神面の強さも肌で感じる。現状、死角は見当たらない。ならば阪神が付け入る隙は…。カギは3、4月の戦いか。
リーグ優勝した03年の3、4月、阪神は17勝10敗1分け(勝率・630)で、スタートダッシュに成功した。秋山がオープン戦初登板から「一発目が大事」と話すように、序盤で今年は違う-という意識付けが重要だ。金本監督は「走力と守備力」が広島との差と分析。キャンプでは走塁練習も増え、自らノックバットを握って、特守を課すシーンが多々見られる。
それは野手陣に限らず、投手も同様。昨季は投手全体で15失策。ゴロ捕球のミス、悪送球など失点につながったケースも多かっただけに、練習から徹底を求めている。
課題の両項目に上積みが見込まれ、加えて盤石リリーフ陣の存在感だ。昨季のチーム防御率3・29はリーグトップ。78勝のうち、中継ぎで勝利した試合は31勝あった。5投手が60試合以上に登板。プロ野球史上初の記録で、救援防御率2・64もトップだった。
「逆転のカープ」と呼ばれるほど、広島は終盤の強さを誇る。16年は45回、17年は41回の逆転勝ちを記録した。藤川、桑原、マテオらが登板した、21日の韓国KIAとの練習試合。0封リレーに担当の広島・玉山スコアラーは「中継ぎ陣は今年も強力なようですね」と顔をしかめた。ロサリオ加入で得点力アップが期待されるだけに、昨年同様に守り切る戦い方ができれば確かな勝算も見えてくる。(デイリースポーツ・田中政行)