【野球】広島の強さの裏にあるもの 大瀬良が明かす“ぬくもり”
3月に入ってオープン戦も白熱してきた。今年のセ・リーグは、広島は…。3連覇を阻むチームがあるのか、開幕まで1カ月を切る中で注目が集まる。2月後半、広島キャンプを取材した。選手の仕上がり、チームの完成度を確かめると同時に、カープという球団の“ぬくもり”が、強さの裏にあると感じた。
「親身になってくれる人が、僕のことを考えてくれる人が、よりたくさんいます。それはカープじゃないと、ないと思いますね」
開幕ローテは5人が当確。その中でも各方面から評価の高い大瀬良大地投手に話を聞いた時のコメントだ。一昨年限りで引退した黒田博樹氏と、石原慶幸捕手の助言でフォーム改造に着手した。「2人に『今の直球では苦しい』と、ハッキリ言ってもらった。見直すきっかけになりました」。先輩の言葉は、自分自身でも痛感するものだった。
昨年10月のCSファイナルS第5戦。DeNAの筒香に五回、初球の146キロをバックスクリーンまで運ばれた。
「あの日、球速も結構出てたんですけど。それでも普通に、内寄りの球をセンターに持っていかれた。甘かったのもありますけどね。やっぱり岡田とか、薮田とか、彼らの体感のスピードよりも劣るんだろうな、と。似たような投手がたくさんいる。そこと比べられると、自分の球は速く感じないんだと。真っすぐを見直そうと思いました」
石原からは具体的な助言も受けた。(1)マウンドに傾斜に逆らわずに投げること。(2)左右の動きを対称にすること。
動作解析の専門家にも話を聞き、一からフォームを見直した。「投げにくくなる怖さがあった。でも、何十年も受けている捕手がそう言うんだから、間違いないよなと」。思い切った改造は現時点で吉と出た。角度が付き、ベース上での強さが生まれた。相乗効果としてスライダー、フォークもより効果的に決まるようになった。
決断に至った背景にある先輩の助言。野村や岡田、薮田ら、同世代の選手から受ける刺激…。そして右腕が強調したのは技術面以上に、カープという球団に対する愛着だった。
「僕なんかは特にそう思いますね。1年目、2年目でマエケンさん(前田健太)がいて。黒田さんがいて。すごい人が身近にいた。ケガしたりしてたら、下の子たちが上がってきて。負けないようにしないといけない。いろんなところからの刺激がすごく多いです」
そして、こう続けた。「人に譲りたくない環境、渡したくないものがある。他のチームのことは分からないですが、カープにしかないものがありますね」。チーム内には、日本一の練習をしている自信がある。その上で、連覇を遂げた確信がある。戦力とともに、ナインの精神面も充実。王者は今年も手ごわそうだ。(デイリースポーツ・田中政行)