【競馬】“1勝よりも一生” 多様化するクラシックへのローテ
18日のスプリングS(1着ステルヴィオ)で主なクラシック・トライアルが終了した。ダノンプレミアムとラッキーライラック。17年JRA賞に輝いた牡牝2歳チャンプ2頭が始動戦を完勝し、確固たる中心として本番に歩を進める。ただ、その中で気になった点がひとつだけある。
最近の3歳トライアル戦が少頭数で争われていることだ。今年のチューリップ賞と弥生賞の参戦が10頭。スプリングSは13頭、若葉Sも12頭立てで行われた。フィリーズRこそフルゲートの18頭立てとなったが、多頭数のレースは以前より減った印象を受けている。
2歳重賞の数が増えた昨今。早期に獲得賞金を確保した陣営が余裕を持たせたローテを組んでいるのだろう。近10年における牡馬1冠目・皐月賞の出走馬の平均キャリアを調べてみた。
02年~06年の平均キャリア=5・86戦。
07年~12年の平均キャリア=5・45戦。
13年~17年の平均キャリア=5・24戦。
前述の通り、昔のように躍起になってクラシック参戦を狙うケースは明らかに減っている。このデータをもとに、ノーザンファーム天栄の木實谷雄太場長に話を伺ってみた。
「この時期の3歳馬にとってはクラシックという大きな目標があります。その一方、現場で携わる身としては成長期の若駒に無理はさせたくないという気持ちもあります。昨今は1レースごとの消耗度も激しくなっていますし、外厩等での調整技術も上がって間隔が開いてもパフォーマンスを発揮できるようになったのが、このデータの要因にもなっているのではないでしょうか」
「今年も春のクラシックに何頭か送り出すことができそうですが、これまでのノウハウを生かして、いい結果を出したいと思っています。これはあくまでも私見ですが、馬本位で進めていってクラシックに出走できるのが理想ですね」
“1勝よりも一生”-。名伯楽・藤沢和雄調教師の言葉である。馬自身の将来を考えるのであれば、若い時期に無理をさせる必要はない。ダービー馬の成績が尻すぼみになることが多い昨今。こうした考えがトレンドになれば、素質馬の末永い活躍が望めるようになるのではないだろうか。(デイリースポーツ・刀根善郎)