【野球】球界にもあった「森友問題」 中日組閣の舞台裏
何が真実で、何がウソなのか。世間を騒がし続ける森友問題。実はプロ野球界でも昨年、『森友問題』が巻き起こっていた。
昨年9月1日。甲子園の三塁側ファウルグラウンドで、中日・友利投手コーチが思案顔を浮かべていた。
「なかなか監督がウンと言ってくれないんだよね」
8月31日終了時点で50勝65敗5分けの借金15。23試合を残して5位に沈んでいた。
「誰かが責任を取らないといけないでしょ。監督に『辞めさせてください。編成の方に回らせてください』とお願いしたんだけど」
森繁和監督は腹心の申し出に対し、即座に首を縦には振らなかった。
「デニー(友利コーチ)には、1軍投手陣の切り盛りを任せてたからな」
森監督の思いと、友利投手コーチの考えが交錯した“森友問題”。4日後、森監督が申し出を受け入れる形で、友利コーチの編成部国際渉外担当専任が発表された。
森監督は後日、当時のことをこう振り返った。
「デニーには最後まで投手の面倒を見て欲しかったけど、あのタイミングが限界だったのかもしれない。このチームを立て直すには、外国人投手の力が必要だった。アメリカにはデニーのコネクションがある。動き出すには、あれ以上遅れるワケにはいかなかったからな」
願いを了承してもらった友利渉外担当は素早く米国に飛び、情報を集め、各地で交渉を重ねた。「足元見られて、値段はふっかけられるし、大変だよ」と苦笑することもあったが、メジャー通算51勝を誇る右腕のジー獲得に成功した。
友利渉外担当は森監督の存在についてこう語る。
「頭が上がらないよ。プロの世界に入ってから、今までずっとお世話になってきてるんだもん。ただ、この人のためなら…と思わせる人。面倒見もいいし、今の時代に少なくなってきた義理人情に厚い人。これからも、その気持ちに代わりはないだろうね」
森監督は友利渉外担当をどう思っているのか。
「全てを言わなくても、全てを察して、理解してくれる男だな。1から10までじゃなくて、1から3か4まで話せば、10を理解してくれる人間。そんなヤツだよ、アイツは」
なかなか人を素直に褒めることのない森監督の言葉からすれば、これ以上ない賛辞。ユニホーム組と背広組に立場は変わっても、常日頃からコミュニケーションを密にしている。意思疎通には事欠かないし、両者の間に嘘偽りはない。こちらの“森友”は“健全”だ。(デイリースポーツ・鈴木健一)