【野球】OP戦最多引き分け「4」のヤクルト 中身に見えた執念の定着
再起へ向けて将が求める姿勢は、選手に浸透しつつあるのではないか-。ヤクルトのオープン戦の成績と戦いぶりを振り返ると、少なからずそう感じられる要素があった。6勝6敗4引き分けの8位。引き分けの数は、12球団最多だった。
前向きに捉えられるのは、4引き分けの内容だ。すべてが終盤に追いついたもの。八回が1試合、土壇場の九回が3試合だった。
2月24日の日本ハム戦は、1点を追う八回に3連打で得点して3-3。3月10日の広島戦は、2点を追う九回に4連打などで食らいついて6-6に。翌11日の広島戦も2点ビハインドから八、九回に1点ずつを返して3-3。23日の日本ハム戦は、3点を追う九回に5安打を集中して4点を奪い、一度は試合をひっくり返した(九回裏に同点とされて7-7)。
すべての試合で、同点劇にホームランは絡んでいなかった。引き分け以外の試合でも、3月6日の中日戦では7点を追う九回に連打で4点をもぎ取り、一打同点の場面まで作った。つないでつないで得点を挙げるところに、粘りがある印象が強く残った。これらの試合後には、小川淳司監督も「非常にいい攻撃だった」とうなずいていた。
キャンプイン前、キャンプ中と、指揮官が何度も繰り返していたのが「1球に対する執念、勝ちに対する執念」という言葉だった。実戦を見るにつけ、執念が伝わってくる場面は確かに多かった。舞台はオープン戦。試合終盤は両軍とも主力が退いていることが多い。とはいえ、若手や存在をアピールする立場の中堅が、チームとして目指す姿勢を体現した意義は小さくない。
オープン戦を総括した首脳陣が収穫に挙げたのは、チーム全体の底上げだった。小川監督は「控え選手のボールに対する執念、途中から出た選手のレベルが上がってきたかな」と評価。「ペナントレースになれば(控えの力も)必要になる。こういう野球を戦っていくというスタイルは、選手は感じてくれているのでは」と適材適所の起用ができる戦力になってきたことを示唆した。
宮本ヘッドコーチも「若い選手の底上げはできたかな。レギュラーにけが人が出た場合でも、1軍でやれるぐらいにはなってきている」と話す。オープン戦で見せた粘りには「評価はできるけど、まだまだ」と手厳しかったが、前進していることは認めていた。
猛練習に明け暮れたキャンプ、粘り強さを印象づけたオープン戦を経て、いよいよペナントレースが開幕する。「4つの引き分け」でうかがわせた勝負への執念をシーズンでも示し続けられれば、ヤクルトがセ・リーグの台風の目となる可能性は十分にある。(デイリースポーツ・藤田昌央)