【スポーツ】戴冠ならずも長谷川穂積氏の金言を実践した小西伶弥

 敗れはしたが胸を張っていい。3月18日に行われたWBA世界ライトフライ級王座決定戦。同級2位の小西伶弥(24)=真正=は同級1位のカルロス・カニサレス(ベネズエラ)に判定で屈し、惜しくも初挑戦での世界王座奪取を逃した。

 カニサレスは16年に現WBA・IBF統一王者の田口良一(ワタナベ)と引き分けた実力者で、対する小西は日本ミニマム級王座を返上し、一階級上のライトフライ級に転向した初戦がいきなりの世界戦。小西にとって格上と対峙することとなった。

 3回にプロ初というダウンを喫するなど序盤は劣勢を強いられたが、中盤以降は左ボディーを活路に猛烈な追い上げを見せた。勝てば佐藤修(協栄)以来16年ぶり2人目となる神戸市出身の世界王者誕生だったが、夢は持ち越しとなった。

 1歳半の時に阪神・淡路大震災で被災。もちろん本人に記憶は残っていないが、当時の話は母晴美さんからも聞かされている。今も神戸市内に暮らすなど地元への愛着は強い。

 同門の偉大な先輩で元世界3階級王者の長谷川穂積氏に憧れ、高校入学直前に真正ジムへ入門し、ボクシングを始めた。専門学校時代には就職活動をしていたにもかかわらず、母の反対を押し切ってプロボクサーとなった。

 今も大切している言葉がある。長谷川氏から与えられた、勝ち続けるための三つの条件。「常に冷静で、調子に乗らず緊張し、最後まで諦めない。それらを均等に保てた選手が本当に強くなる」と教えられた。「いつも緊張してばかりなので難しい」と頭をかくが、大一番で金言を体現しようともがき、劣勢から判定まで持ち込んだ。

 「完璧に僕の負け」と潔く敗戦を受け入れた小西だが、下馬評を覆す戦いぶりは立派だった。「楽しかった。絶対はい上がる」と力強く結んだ。今はゆっくり拳を休めてほしい。そして再起の日を心待ちにしたい。(デイリースポーツ・山本直弘)

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